【5】絵本童話(2)
神々が子ども向けのイラストで描かれ、背景は抽象的に描かれている幻想的な表紙。
長年、見ることも叶わなかった絵本童話──記憶と相違がないか確認するようにゆっくりと頁はめくられる。
しかし、それは束の間。
いつもより早足で姫との約束の場へと向かったが、すでに姫はいた。行儀よく、黒いソファーに腰かけて。
「申し訳ありません。お待たせいたしました」
一礼をし、部屋に入る。黒いソファーに白い衣服はよく目立つ。しかし、一際目立つのは、
「待ってないよ」
言葉に甘えることなく、
「
ポンポンと、
「はい」
「失礼します」
「うん」
となりに座ったときにわずかにあけた隙間は、弾むように返事をした
軽装備を解き、洋装で赴いた
「それでは、読ませていただきます」
場を繕うように、絵本童話の朗読は開始される。
お空のずっと上に、神様の住む世界があります。
そこには知性の神、戦いの神、愛の神などたくさんの神々が住んでいます。
そして、その神々を統治する神様は大神と言いました。
大神は、それぞれの神様たちに約束ごとを与えました。
約束は守るものです。
その約束ごとを破ってしまうと災いが起きてしまうため、神々は与えられた約束を守って暮らしていました。
ある日のことです。
いつものように戦いの神と愛の神が地上に降りて、世を統治していたとき、愛の神は悪魔の子に会いました。
やさしい愛の神は、悪魔の子に手を差し伸べてしまいます。
すると、たちまち愛の神は悪魔の子に魅了されてしまいました。
世の統治が終われば、天界へと還らなくてはいけない戦いの神と愛の神。時間は刻々と迫ります。
愛の神は悪魔の子と離れたくないと、天界へ連れて還ってしまいます。
大神は怒りました。
天界に悪魔を連れ込むのはタブーだと、誰もが知っているからです。
大神の怒りは、誰も止められません。
大神は悪魔の子とともに、愛の神を地へと堕としました。
そのときです。
天界が大きく揺れ、大神を守る女神も天界から堕ちてしまいました。
そして、戦いの神は堕ちた愛の神を追って、地へと堕ちていったのでした。
「これが
「女神様は、どうなったんだろう」
「さあ……ただ、この大神を守る女神は、
「
『そう、
幼いころの記憶を辿って話したせいか、
「でも、他に女神様は出てこないけど?」
幼さが残る声に、
「愛の神が、女神だったのではないかと」
「そうなの?」
「ええ、そうでなければ、戦いの神は恐らく追っていかないかと思います」
ふうん、と不思議そうに
「ねぇ……女神様は幸せになったと思う?」
と、問う。
「はい。とても幸せになったのではないかと……幼いころは思いました。よろしければ、この本はそのまま
「え、いいの?」
「はい」
絵本童話の本は、貴重品だ。今や流通はされておらず、語り聞くのが主で、あっても限られた城に一冊あるかないかだ。
しかし、そのことを
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