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「確かに今の美紀は無気力だ。だがそもそも俺が〈眠り〉を提案しなければこんなことにはならなかった」
そう。美紀は遺書替わりにコピーを残すと言った。
コピーとして生きるつもりがあったのか、剣人にはわからない。「その時に考える」と。だが結局、自分と有希子が反対し、負債や遺産の処理が終わって消えるつもりだったことは知っている。その通りにいけば、こうして煩わされることもなかっただろう。
けれど里巳だけの責任ではない。〈眠り〉を提案されて反対しなかった自分にも責任はある。
「でも、無気力は治せるんじゃないの?」
コピーに関する事は剣人もそれなりに調べていた。母がコピーなのだから、関心が向くのは当然と言えた。
無気力は〈眠り〉のコピーに多く起きる現象で、解消方法は活動させることであると。
ただ、里巳にそれを聞こうとはしなかった。里巳も
「今の美紀に、コピーとして活動する意志はない。それに今までも無気力にならないよう、外出オプションを使って面会の時は外に出かけてもいた。
現実の母の死。
剣人は確かにそれを受け入れた。受け入れることが母に対して真摯であると。それは今も変わらない。
「それに、もう十分に待ったとも言っていた」
十分に待った。何を?
数秒後、剣人は気づく。
しかし剣人の動揺はそれに気付いた最初だけで、あとは緩やかに収まっていった。
今やすっかり遺品として見ているコピー。その心境を思いやることを心が拒否した。
「剣人は、どうしたい?」
里巳に問われ、戸惑う。消去を望む
「じいちゃんは?」
訊ね返した。そもそもコピーに固執していたのは里巳のほうだ。
「俺は、コピーの望むようにしたいと考えている」
望むように。つまり消去。
「俺が美紀を人として扱おうとしても、それは伝わらなかった。自分は物じゃないと言われたよ」
里巳が人として扱おうとしてもだめだった。
なら自分はどうか。里巳よりも悪い。遺品、形見。物として見ているのだから。
だが何かが、消去すべきではないと訴える。
母のコピー。それは唯一残っている母の人格のデータ。本当に消去していいのか。
ではどうしたいのか。自分の気持ちを探る。このまま残ってほしい。今まで通りに遺品として残ってほしい。
何と自分勝手な考えだろうか。
「すぐには決められないか」
里巳が言う。ここで何もしなければ、
「俺は、残しておきたい」
じっと剣人を見て、無言で先を促す里巳。
「コピーは、大切な遺品だから」
身勝手な理由。それを聞いた里巳は目を瞑り苦渋の顔。怒るだろうかと構える剣人。
やがて里巳は剣人を見据える。
「それもいいだろう。だが、美紀には直接伝えたほうがいいかもしれん」
里巳は怒らなかった。
直接会って話す。剣人もそれが
「コピーと会いたくないなら俺が伝えてもいいが」
「行くよ」
「わかった。じゃあ美紀には伝えておく」
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