第5話
机の上には食べ終わった皿皿皿。
カチャと食器を置く音がした。はっとしてそちらをみると満足そうな顔と恐ろしい額を示す伝票がおいてある。
「ごちそうさまでした。」
ぱちりと手のひらを合わせる音とあふれんばかりの笑顔に、財布が空腹に悲鳴を上げた。懐も凍えきっている。それもそのはず、遅刻のお詫びにと担当の子に昼飯をおごる事にしたのだがその子がとてもよく食べる。
(貧乏作家に容赦ないなあ...)
コーヒーを一口すすると彼は、
「そういえば先生は何も食べないんですか?」
と聞いてきた。
「ああ、腹の調子がちょっとね。」
と乾いた笑みで答えると彼は次の話題に入った。
正直君の食べている姿だけで腹がいっぱいだよ。と言ってやろうと思ったが、笑顔を見てやめた。
―――――――――――
でた。向かいの変人先生。
最近よく見る気がするのはもはや気のせいとは言い切れないのではないか。
そこそこ混み合った昼間のファミレスに、変人先生は担当さんをともなって現れた。
笑顔でギャル○根顔負けの量を食べ進める担当さんに対して変人先生の顔はどんどん青白くなっていく。あの小柄な体のどこにその量が入るのか。しばらくその食べっぷりをみていると担当さんはすっと手を伸ばし勢いよく呼び出しベルを押した。注文を受けた伝票の金額は5桁になろうとしていた。
レジを担当したのは初めてではない。ただしこんな金額は先日来店された6人家族の方も越えてはいなかったとおもう。
―――――――――――
なぜあんなに怒ったのかももはや不明なほど、今日の僕はよく食べたし、先生もあの金額を払ってくれた。ので、朝寝坊はとりあえず許そうとおもう。
ただし、今日の予定は殆どつぶれてしまった。
「誰だったかなぁ...ネタ作りのために一緒に出かけたいとかいったのは...」
と呟くと、先生の顔がとたんに真っ青になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます