第6話
時速八十キロぐらいのスピードで、吹き飛ばされたさえりさんは壁に激突した後、床へとうつ伏せの状態になり倒れていました。両手を、交差させるようにして拘束した状態で、迷斎さんはさえりさんに股がっていました。
バタバタと足を動かし、必死に抵抗するさえりさんですが、全体重をかけられて、こうもガッチリと拘束されていては、さすがに解くのは容易ではないようです。
「ゲホ、ゴボ……まったく、遅いですよ迷斎さん」
「ちょっと、調べたいことがあって遅れてしまった。まぁ、ヒーローは遅れて来るものだろう?」
さえりさんとは対象的に、涼しい顔で迷斎さんは言いました。
まあ、迷斎さんの場合はヒーローでも、ダークヒーローの方ですけれど……。
女性に股がっている今の状態を見たら、間違いなく悪役は迷斎さんの方なのですが、ツッコンでいる余裕は私にはありませんでした。
「そんなことより、早く
私は、部屋の壁にもたれたままの、娘さんの人形を指さして言いました。こんな状況でも、微動だにしない人形を指さして。
しかし、迷斎さんは人形の方には見向きもせず。さえりさんの髪を掴み、私に言いました。
「弁天堂、勘違いしているようだから教えてやる。
「…………えっ」
それから迷斎さんは、遅れて来た理由と、今回の件について話始めました。
一ヶ月、買い物帰りの母と娘いました。
その日は、娘の十八回目の誕生日であり、母と娘の二人だけの細やかな誕生日会を行うための買い物帰りでした。
しかし、運命とは時として残酷であり、帰宅途中の母と娘に一台の車が突っ込んで来たそうです。
交通事故。
運転手は飲酒していたようで、前方不注意とブレーキをかけるタイミングが遅れたために起きた事故でした。
しかしこの時点では、母も娘も足の骨を折るなどの怪我は負ったものの、命に関わる重症ではなかったのですが、不幸はここで終わりではなかったのです。
事故現場は、人通りの少ない裏路地で起きました。運転手の男は某大手企業の重役であったようで、飲酒の上に怪我まで負わせたとなっては、将来が閉ざされてしまう。
そう思ったようで、救急車を呼ばず二人を車に乗せて拉致したそうです。
車は郊外の廃墟へと向かいました。
男は、廃墟へと二人を運び降ろすと、娘を強姦したそうです。
お酒が入っていたこともあり、自暴自棄になったのでしょう。愛する母の目の前で、見ず知らずの男に犯される娘。泣き叫んでも誰も助けに来ない状況に、母は行動を起こしました。
廃墟は解体途中に放棄されたようで、そこら中に鉄パイプやら工具などが散乱していて、母はその工具を手に取り、男へと襲いかかりました。
ドチャっ!!
鉄製のハンマーを、男の後頭部へと何度も、母は振り下ろしたそうです。
ドチャっ!!ドチャっ!!
ドチャっ!!
ブチャっ!!
グチャっ!!グチャっ!!
やがて、男の頭部は原型を留めないほどに破壊され、男は動かなくなったそうで、娘はあまりの光景に気を失ったそうです。
「そして、娘が目を覚ますと病院のベッドの上で、警察から母親の死を聞かされたとさ――。これが、この土御門家を襲った不幸話だそうだ。弁天堂、感想は?」
「……………………」
正直、あまりの内容に言葉が出ませんでした。
あまりにも不幸で、あまりにも後味の悪い話。
私は、ただ黙っていることしか出来ませんでした。
「言葉も出ないか?まぁ、不幸ってものは重なる時は重なるものだから、どうしようも出来ないものだが、今回はその後が不味かった」
「…………どういうことですか?」
「話を聞いていなかったのかい?死んだのは、母親の方だよ」
「!!」
あまりの話に、私は忘れていました。
迷斎さんに、
「弁天堂。これはあまりにも稀有なケースで、
迷斎さんは、不気味な笑みを浮かべながら、私に解いて見ろとヒントを出しました。
稀有なケース。
魔女の血。
私は、あるひとつの答えに行き着いたのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます