このお話はフィクションです

永村冬馬

序章 起点回避はお手の物?東西鎮魂戦

景色ひとつ取っても今の自分の気持ちを正しく表現することが出来ないのは口惜しが、ここでの行動の制限には抗えない。でも、彼女はそんなこと気にしない、気になならないのだ。

「私も綺麗だと思うときはあるんだよ?」

桜並木を僕の少し先を歩く彼女の姿は、今の気持ちを言えずにいる僕に対する当て付けのようであり、彼女の現在の気持ちを如実に表しているようであった。

「正直に言えばこうなって良かったんじゃないかと思うよ。いやいや、ホントにホントに。やめてくれる?そんな目で見られても正真正銘、紛ごうことなきただひとつの真実はかわらない訳で、実際にここまで来るのに軽く世界を数回は救ったような気になっている阿呆なぁ君にはまだこの状況を受け止められないのは確かだと思うよ、でもね落胆するにはまだ早いよ」

グッと、ここは堪えた。

今の気持ちに嘘や欺瞞はない。ない、と呼べる根拠は確かにあるのに今此処に至ってそれを証明することが出来ないのは、ただただ不満である。いや、大いに不満だ。

「正直、私は満足してるよ。君のことも含めて言うと、及第点と言うにはいささか上手く行き過ぎてるきらいこそあるものの、十分な成果を上げてたね」

彼女は嬉しそうでこそあるが、その表情をこちらに向けようとはしなかった。

余裕はないんだなぁ。

様はテンパってるんだ。自分の気持ちの変化に気付かないフリをして、饒舌に語りる。一言一言に軽薄さが滲み出てるのが良い証拠だよ。

お前はそん風には話さない。

風の音が煩わしくなるほど周りに音がない。歩く音が何処にも向かってないと雄弁に語りだしたのを切っ掛けに、彼女は独唱を続ける。

「目的地がないと人間の足は止ってしまうと思っていたけど、こうやって歩けているのには素直に感激だね。世界の何処でも歩いて行けるよ。君と一緒なら」

やめてくれ!!

世界なんて単語聞きたくない。もう分かったよ。

上を見上げると桜の枝が風に煽られ踊ってる。こんなに桜が綺麗なモノなのだと今まで気づかなかった。いや、見ていなかっただけだ。

「桜の花ビラのその後って考えたことある?私はいつも考えてたよ、似てるからね。散ってしまうとさ、あの見目麗しいさとは裏腹にそれはそれは醜いよね。側溝に溜まった黒くて中途半端なピンク色のあれは只のゴミ。世界の隅で燻ってる今の私たちみたいだよね?」

皮肉混じりの彼女の言葉は何処か現実味に欠けるていて、その言い方に僕は少しも同意出来なかった。

お前の気持ちはどうなるんだ?ここに至るまでどれだけ...。

「君の優しさが私をここに導いくれた。ありがとうね」

そんなのは感謝でもなんでもない。当てつけだ。ただの憂さ晴らし。

彼女は止まる。行き先なんてない道程は僕の勘違いだった。目的地は確かにあった。ただ、そこがゴールではない。

「だから、さよなら。そして、」

道を間違えた奴には道はない。だからゴールなんてあるはずがない

「俺たちの冒険はこれからだ!!!」

最近の連載打ち切り漫画でも聞かなくなったセリフではあるがしかし、ある意味打って付けの連載再開の狼煙だはなかろうか。。

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