第1話・土地を下さい(懇願)
まさか、本当に異世界をくれるとは思っちゃいなかった。神様って凄ぇや。
だけどもうちょっとばかり親切でも良いんじゃ無かろうか。
何故土が無いのさ。幾らなんでも脚が地に着かないんじゃあ、どうも落ち着かない。
「……こんなとこ一体どうすりゃ……ん?」
ひらひらり、宙を舞う一冊の紙束。
【異世界開拓マニュアル・
天地開闢と言えば、宇宙の始まり【ビッグバン】を示す言葉だ。
「……読めって事なのか……?」
何も無い空間で漂いながら読書だなんて、新鮮過ぎて思わず鼻で笑ってしまった。
いつか肉眼で見た水中のアオミドロの如く微動だにせず、マニュアルの読破に集中する。
そんな自分を想像すると、なんともこの危機的なはずの状況が阿呆らしくなって来たのだった。
今この空間には、空いた部分を支える『柱』がない。つっかえ棒程度のものでも『代わり』がなければ、いずれ崩壊してしまうだろう……とマニュアルには書かれていた。
これって何か科学雑誌で読んだな……とか思いもしたが、取り敢えずマニュアル通りにやってみよう。
「……えっと、『CREATE COATLICUE』?」
ボムン、とよくある爆発音。
嫌な予感しかしない。
「はいはーい☆コアトリクエだよぉ☆」
何だコイツ?
真っ白な八重歯、緑のショートヘア、こぼれ落ちそうなクリクリの瞳……。
(ちくしょう可愛いじゃねぇか!!)
俺好み過ぎて正直辛くなった。
ただ語尾はうざかったが。
「コアたん、って呼んでね☆」
すまないな、そう呼ぶ勇気が俺にはない。
「……コア……ちゃん?」
呼び掛けると、コアトリクエの目は爛々と輝いた。
「はわわ……☆マスタァがコアの名前呼んでくれたぁ……☆☆」
ぐぬぬ、あざとい。
『はわわ』なんて反応、アニメ以外では見た事も無かった。
いやむしろ、もといた現実なら引いてる。
浮世離れしたレベルの美少女だから許せるのだろう、多分。
「マスタァの為に、コアたん頑張る!」
「……ところで何が出来るんだ?」
「それはぁ……そぉい☆」
ゴゴゴゴゴ……と空間の軋む爆音。
え、何?俺とんでもない美少女を召喚したんじゃなかろうか。
……ポンッ。
恐ろしくデカイ爆音の後、恐ろしくチンマイ石が出てきた。
一体これはなんだ。
「これはぁ、分裂する石だよぉ☆」
……あぁー、なんとなーく解ったぞ。
「石が分裂して足場になるまでどの位掛かるの?」
「うーん、……半月?」
「…………」
凄い力だと思うが、もうちょっと便利でも良いんじゃないか神様。
半月の間、俺はアオミドロなのか。
空中読書で半月の暇を潰せと?
半月がここまで途方もなく長く感じるとは、元いた世界ならば一生思わなかっただろう。
待つだけの時間って長いからな。
それが半月……だいたい15日間ときた。
多分【暇死】してしまう。
「……マスタァ?」
「よし、暇潰し出来る何かを創ろう」
(第2話へ続く)
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