やおよろず!―異世界で神話を創ってみた―
アーモンド
プロローグ
「さぁて、帰るか……」
静けさの極みから抜け出し、帰路へ着く。
それがここ2年位の俺の生活になっていた。
大学入試二浪、希望学科史学の俺は
図書館で午前から勉強、昼を近所のカツ丼(359円)で済まし、また午後は図書館で勉強漬け。そして6時を回ったら帰宅。
いつもならしっかり標高0メートルのアスファルトを歩くのに、その日は何故か良い景色が見たくなって、近所でそれなりに評判の【高台】へと足を向けた。
「……俺、癒しが欲しいのかも知れない」
ぼそっとそんな事を言ってみるが、やけに寂しさを感じてしまったから【高台】を降りて帰る事にする。
だって寂しいの嫌じゃん?
……取り敢えず、登ってきた石階段を降りる。その段数圧巻の千段。
鼻歌なんざ歌った位にして、石の段を踏みしめ行く。
だけど俺は油断し過ぎていたのだろう。
いくら日本が国際的にも平和な国であるとはいえ、少なからず無差別殺人は起きる。
その被害者が俺であったとして、特段おかしくもないわけだ。
――――そう。俺は突き飛ばされた。
誰かも判らない、ただ、背後から殺気も無く手袋をしていただろう手で突き飛ばされた。
あっ、と気が付いた時には階段の角がおでこに肉薄していた。
時すでに遅し、頭から転落して、転げた軌道に赤い絨毯を敷いていく。
多分途中から既に意識が無かったけど、落下中はずっと、ひたすら痛かったと思う。
そして、次に目を開くとそこは少なくとも人のいるべき世界ではなかった。
いわゆる天国、白い壁と天井の隔離された部屋に、少女の抑揚の無い声が響いた。
『おめでとうございます!!
貴方は天国にいらした10那由多人目の人間で御座います!!
貴方には【異世界】をプレゼントします!』
……は?
那由多とかいう聞いた事も無い桁に困惑する俺をよそに、『声』は俺を天から堕とした。
『それでは素敵な異世界開拓ライフを!!』
ふざけるな、と言いたかったが、少女(の声)に怒鳴るのは良心が邪魔して出来そうにも無かったから諦めた。
こうして俺、睛堂颯史は神?からプレゼントされた【異世界】を開拓する羽目になった。
歴史しか興味の無かった俺が、果たしてここを【世界】として発展させていけるだろうか。
俺の国生み神話の序章が書き出された。
これは無から有を生み出す、永い物語。
「……とは言ってみても」
まず、生命どころか土地も無ぇ、だと!?
(第1話に続く)
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