終話 下官張賓、貞賢を具す
貴公が武にて、下官が文にて
同じ主を
なので、孔萇殿。
以前王に連れられ、
その日王と下官は、廷尉より光文にまつわる、短からぬ物語を頂戴した。
話を終え、下官らが席を辞した、その夜。廷尉は毒を仰ぎ、
廷尉は私財を貯め込まれることもなく、残されたのは室内にあった数万余語の言葉のみ。しかも、それらの引き渡し先に、下官をご指定なされた。
下官と廷尉には、あの日以外では面識らしき面識もない。
光文と、その
廷尉は、劉曜の属であるを貫かれつつも、民を、王に託されたのだ。また王の腕として、下官をお認め下さった。
もっとも、責務の重き故に、貴公とは少なからずぶつかり合ってしまったな。下官の
廷尉は、光文の物語を語られるに際し、ご自身の苦境に対しては全く触れられなかった。有り得ぬ事である。簒奪の逆を為した劉曜に対しても忠実に仕えられた廷尉であったが、劉曜の振る舞いたるや、忠に仇にて返した、と言えるものであった。
やがて徐々に玉座より遠ざけられ、臣らと会った頃には、もはや蟄居にも近しい有様であった。
周辺も、劉曜の怒りを懼れ、廷尉に近寄らぬようになっていた。その心中たるやいかばかりであっただろうか。にも拘らず、廷尉は仰った。「暇が出来たのだ、ならばこそ、やれることもあろうと言うものよ」と。そして王に竹簡の山をお見せになった。
あの尽きせぬ壮志、頭が下がるばかりであった。
廷尉のお言葉が、いま、ただならぬ重みを以て下官に問うてくる。天とは何か、王とは、民とは、と。
廷尉の話を伺ってより、王の言葉には天、と言う言葉がよく出てくるようになった。ただそれは、無心に畏敬するのとは趣が異なっているよう思う。大いなる物として見、しかして時に怒り、時に挑まんとされるかのようである。
遙かな昔、
一方で、劉氏の漢朝が
詰まらぬ話をした。
何を胸に抱こうとも、我らが勝てば良いのだ。
王の剣として、共に、朝敵を討ち果たそうぞ。
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