ショータイム
そのとき二人は手を繋いでいたという。
*
私は物心ついた頃から自分のことを特別だと思っていた。
だって、周りの皆は私のことが大好きで、私のことをかわいいと言って、私の望みを叶えてくれたからだ。
みんな、私を愛してくれた。
だから、私は特別な女の子なんだと思った。
でも、そうじゃないって気付いたのは、小学校に入った頃。
自分のことを特別だと思っているやつが学校には何十人もいて、私もそのうちの一人だった。
本当に特別な子は、頭が良かったり、脚が速かったり、絵や作文が上手だったり、歌やピアノが得意だったりした。そして、何かあるごとに朝会で表彰され、誇らしげに笑って壇上からこちらを見下ろしていた。選ばれし者の高みから眺める世界はどんなものだっただろう。そことは無縁なまま、私は六年生になった。
ようやく私がそこに立ったのは、卒業式で証書を受け取ったとき。その一回きりだ。
みんな同列に権利を得て、その高みに上る。そんな状況で眺めた景色は、なんとも侘しく退屈だった。
違う。私が見たいのは、これじゃない。
中学に入って、演劇部に入部した。
ずっと決めていたのだ。中学校に行ったら演劇部に入ろう、って。
お芝居を見るのは昔から好きで、『アニー』を見たときの興奮は印象深いものだった。光の降り注ぐ舞台の上で、みんなの注目を浴びて輝くひとたち。テレビで見るドラマなんかよりも、もっとずっと、特別な感じがした。あのときから、私の心は決まっていた。
いつか、大人になったら、私もあの舞台に立つ。
踊りは下手だし、歌もあんまり上手くないけど、きっと大丈夫。
だって、私は特別だから。私に出来ないことなんて、ないはずだから。
私が演劇部に入ったら、どうなるだろう。先輩たちは歓迎してくれるに違いない。戦力になると言って喜ぶだろう。はじめは、あんまり良い役はもらえないかもしれない。でも、それも束の間のことだ。私は主役を演じて、みんなに感動される。すごいって言ってもらえる。みんな、私を好きになる。小学校で、私はあんまり目だった子じゃなかったけど、でもここでならきっと。
みんな、私が特別だってことに気付いてくれる。
演劇部の部室は音楽室や視聴覚室と同じ建物にあって、床にカーペットが敷いてある、放送室とひと繋がりになった部屋だった。壁に窓みたいにガラスがはまっていて、そこから放送室が見える。
普通の生徒は入らないような部屋に、私はわくわくした。先輩たちはジャージ姿で、台本を片手に丸めて持っていて、さまになっていた。私も来年になったら、ああいうふうに新入生を迎えるんだろうか。きっと、新入生は私のことを見て喜ぶだろうな。こんな素敵な先輩に教わるなんて、と気後れするかもしれない。
「部活見学の新入生。自己紹介してくれる?」
見学の生徒は、私のほかに五人いた。そのうちの三人は、群れになって行動する、いかにも退屈そうなその他大勢ってかんじだ。もう一人は――
「はい。大塚です。大塚沙里」
手を挙げて自己紹介する。その声が、部屋中に通った。自信に満ちた目をしていて、なんだか、勘違いしているかんじだった。お前なんかその他大勢なのに。目立とうとして、みっともない。
「松嶋安奈です」
落ち着き払って、私も名乗る。
賢い子だという印象をつけるために、冷静に、だ。
そこから、ばらばらと三人組が勿体つけながら名乗った。恥ずかしがっててみっともない。ああ、いやだ、虫唾が走る。こんな連中が入部してきたらどうしよう。きっと居心地が悪いに違いない。
「大塚さん。演劇、好きなの?」
「うん。劇団四季が好きなの。ママに連れて行ってもらうの。ママが会員だから」
「へえ、いいなあ」
内心で、自慢かよ、と思う。しかもママって。ガキじゃないんだから。この子も全然特別じゃない。そう思うのに不安だった。私は、大塚沙里の目に、どう映っているだろう……。
大塚沙里――サリーは可愛かった。
大きな目を縁取る二重の瞼。ぷっくりと愛嬌のある涙袋。目の下のホクロが、いかにもなチャームポイントだった。二回折ったスカートから伸びる太腿はほっそりしていて白かった。
長い髪の毛がふわふわにウェーブしていて、先生に注意されるたびに「天然パーマなんです」と頬を膨らませてみせた。先生たちは、そんな沙里の挙動が可愛くて好ましいのか、何度も繰り返しわざと注意をするのだ。教室で。廊下で。校庭で。すれ違いざまにわざわざ呼び止めて。「大塚、なんだその髪」と、笑い混じりに忠告する、男教師のだらしない笑顔。可愛いサリーとの応酬を喜んでいる。気持ち悪い。
私は部活が同じだから、サリーと仲良くなって、一緒に行動するようになった。サリーは成績がちょっと足らなくて、私が随分助けてあげた。二年生になると、サリーと私は同じクラスになって、彼女は無邪気に喜んだ。私は、嫌な気持ちでいっぱいだった。これでサリーと比べることが多くなる。何をやってもサリーに劣る。勉強がちょっとできたからって、それで誰か私を好きになってくれるだろうか? サリーみたいに可愛くなければ愛想もなくて、サリーみたいに声が綺麗でもなければ髪も天然パーマじゃなくて、サリーみたいに痩せてなくて背の低い私を? 誰が?
私は、自分が特別じゃないってことを理解し始めていた。
ある時、職員室へ行くと、音楽の先生が私の姿に気付いた。
何か用事があったみたいで「ねえ」と私を呼び止める。
「はい?」
「今日は一緒じゃないの? 沙里さん」
「サリーは今、多分部室ですよ」
「ああ、演劇部の」
「何か用ですか?」
「いいのいいの。大した用事じゃないから。それじゃあ、呼び止めてごめんなさいね」
四十代の、痩せた音楽教師の女は、私のことを見なかった。いつもサリーがいるはずの、私の隣の空間を見た。彼女は私の名前を呼ばなかった。サリーの名前は呼んだのに。私の名前は、覚えていなかったのだ。彼女にとって、私は『いつも大塚沙里の隣にいる子』程度の認識なのだ。サリーの隣にいると、そういうことがあった。何度も、何度もあった。
演劇部で、私は、まだ主役をもらえたことがない。
沙里は、入部して1回目の公演で主役をやった。不思議の国のアリスだ。私はウミガメ。誰も注目なんかしない。ウミガメがどんなキャラクターか、知ってる人も少ないだろう。
私は、特別じゃない。
特別なのはサリーのほうだ。
*
――鞄の中には、演劇部の台本が入っていた。その日配られたばかりの真新しいものだった。それとは別に、何枚かのメモ用紙も見つかった。
*
文化祭を控えて、配役のオーディションが行われた。
演目は『ロミオとジュリエット』。
演劇部には女の子しかいないから、劇中の役柄の性別もすべて女性にした。
女性のロミオとジュリエットの、同性愛劇だ。
これは話題になるかもしれないわね、と顧問の芳原先生はご機嫌だった。まだ二十代で、大学時代は手話劇をしたり、盲人学校に行って読み聞かせをしたり、教育と演劇を結びつけて活動していたらしい。その実績に加え、ジェンダーがどうとか、何やら不思議な文言を操って、上司を説得したようだ。
「さあ、配役を発表するから、みんな集まって」
部長と、脚本担当の先輩と、芳原先生が、みんなを部屋の真ん中に集めた。
「一通りみなさんには、第一希望以外の役もやってもらいましたね。自分の意外な適性にも気付いたんじゃないでしょうか」
芳原先生の視線は、頻繁にサリーに注がれていた。
大体、もう、発表する前から、流れは読めている。
サリーがロミオかジュリエットだ。それ以外の可能性はない。
もったいぶって発表されるのが、鬱陶しくて仕方なかった。
「ねえアン。あなたの第一希望は?」
「え? えっと……なんでもいいよ」
私は、ロミオがやりたかった。それで、サリーがジュリエットになればいい。だってこれは、せっかくの同性愛劇なのに。女のジュリエットなんて普通でつまんないじゃない。 でも、私は、そう打ち明けることができなかった。
やりたいと言った役がもらえなかったら、格好悪くて死にたくなる。
「じゃ、配役発表。まずロミオから」
どうせ、と思っていた。
どうせ、と思ったとおりに、私は呼ばれなかった。
どうせなんて、思わなければよかったと思った。
ロミオ役はサリーに決まった。ジュリエットは部長だ。安定のキャスティングだった。
私は神父改め、シスターの役。なくてはならない役柄よ、と芳原先生は言う。
芳原先生は、私が希望の役に就けなかったことに気付いている。というか、わざとそう仕向けたんじゃないかとさえ思う。私にみじめな思いを味わわせるために。彼女は私の敵だ。大嫌いだ。ジョンレノンみたいな眼鏡をかけた芳原先生が、私の肩に手を置いて、そっと囁きかける。
「松嶋さんは、とても優秀な助演女優よ。あなたのおかげで、ロミオもジュリエットもより魅力的になる。あなたがいることで、引きたつの。舞台はね、一人だけで作るものじゃないから。役者だけじゃない。小道具大道具、照明音響、メイクに衣装。みんな主役なのよ」
みんな特別。みんな主役。そして、そんなみんなをまとめるわたしが一番特別。芳原先生は、そう思っているに違いない。
「不満じゃないですよ、この役。頑張ります」
「ええ。期待してるわよ、ヒロイン!」
ばかじゃないの、って思う。
この演目で、誰がシスターをヒロインだと思うわけ。
先生は、いいことを言った気持ちに酔ってるのかもしれないけど、その言葉って結局私が地味で目立たなくて平凡だって結論付けただけでしかない。サリーの踏み台になれって言ってるのと同じだ。
みんなが主役なんて言葉、慰めにもならない。みんなが同じように特別な世界は、悪夢だ。私だけが特別な世界じゃなきゃ、意味がないのに。
ばかじゃないの。
その日も、そんな気分なのに、サリーと一緒に帰る。
予想外の配役のこと、これから始まる稽古のこと、芳原先生のこと、先輩たちのこと。とりとめなく喋りながらも、サリーのうきうきした気分が伝わってきて、私は憂鬱になる。
「ロミオだなんて、思ってもみなかった。だって、勇ましい人の役なんて、わたし、できるかなあ。いいなあアンは。シスターなんて、素敵。二人を導く役だもの……大人っぽくて、わたしにはできない。すごいな、アンは」
「やめてよ、そういうの」
「えへへ、楽しみだね。衣装もきっと素敵だろうな。ねえ、アン、写真いっぱい撮ろうね。あっ、でもやだな、衣装似合ってないのバレちゃうかも……。アンはきっと似合うよ、シスター服ってかわいいよね。いいなあー」
「だから、やめてよっ」
無邪気に私を羨むサリーが、心の底から呪わしい。
「すごい? いいな? 思ってもないこと言って媚びたって意味ないよ。やめてよそういうの。すごいのはサリーじゃん。主役だもんね、特別だ。何なの、それ。選ばれた人間の余裕ってやつ? そういうところ本当に嫌いなんだよね。私のこと、内心で、見下してるくせに。ふざけないでよ」
「アン……?」
言ってやったぞ、という快感で頭のてっぺんまで震えが走った。ショックを受けたサリーの顔。傷つけられるなんてこと、微塵も考えてなかった無防備な顔。ざまあみろだ。でも、同時にものすごい喪失感に襲われる。サリー。この特別な女の子と、私の友情は、今日で終わってしまう。
明日、部活をやめよう。そう決めた。
「――じゃあね」
あんなこと言ってしまって、一緒に帰れるわけがなかった。ショックを受けて立ち尽くすサリーを置き去りにして歩き出す。私の手首を、ぎゅっと、強く、サリーが捕まえた。
「何?」
思わぬほどに低い声が出た。でも、サリーの手は怯まない。
「アン。わたし、すごくなんかないよ」
「だから、そういうのやめてってば。嫌味?」
「違うよ」
サリーが思いのほか強い力で私を握るのが、なんだか怖くなった。振り解くことができない。演劇部はいつも一番遅くまで部活をしている。だから通学路はもう真っ暗で、みんなも逆方向だから、他に生徒の姿はない。
いつも何もなくても嬉しそうに笑ってるような子なのに、今は感情の窺えない顔をしていた。舶来品のビスクドールみたいだ。青白い頬。見開いた目。風が、髪を舞い上げる。それでもサリーは、まばたきをせず、私を見ている。
「アンにとって、特別って何?」
「サリー……?」
私は、今、舞台の上に立っているのだろうか。そう錯覚したのは、サリーが、いつもとは全然違う女の子に見えたからだ。こんな顔、舞台の上でも、したことがない。普段の華やかさが剥がれ落ちて、冷たく強張った頬に、街灯の明かりが青白く落ちている。
知らないサリーが怖かった。
「わたし、すごくなんかない。あのね、アン。わたしだって、全然すごくないんだよ。平凡で、ただ、何の変哲もない女の子。……あなたと同じ」
この期に及んで、平凡だと言われたことに腹が立って身体が熱くなった。どこかでまだ、私は、私が特別だと信じたがっている。滑稽だ。
「アンは、わたしが演劇部で主役になったから、すごいって思ったの? でも、演劇部の主役になれる子なんて、この日本中、どれだけいるか分からないよ。何万人? 何十万人? この県内だけでも、学校の数だけ、演劇部の数だけ、主役になる子はいるの。ねえ、それでもわたしは特別?」
サリーは、震える声に、私と同じ無力感を滲ませていた。
それが、私には意外だった。
あの子はサリーなのに。……サリーでも、そうなのか。
私は余計に怖くなる。私が特別だと思っていたサリーでさえも、この世の中で、さして特別な存在ではないなんて。そうだとしたら、一体、私たちって何なのだろう。ここにいる意味。生まれてきた意味。これから大人になる意味。ううんそうじゃない。ここにいる価値。生まれてきた価値。これから大人になる価値。あるのだろうか、そんなものが。分からない。
「昔、演劇部の主役をやった子は? 過去まで遡ったら、一体どれだけの人間が、同じような経験をしているかな。この経験が大人になってからも特別だと思う? たかだか中学校の、部活動の、主役。大会にも出ない。記録も残らない。見に来るのは近隣の学生や親族、ごく僅かな物好きだけ。これに何の価値があるの……?」
「じゃあ、私は? サリーでも特別じゃないって言うなら、私のほうが酷い。私のほうが余計にみじめだ。やめてよサリー。やめてよ……」
気付けば、私は泣いていた。
ずっと泣きたかった。自分が特別じゃないって認めて、負けを認めて、諦めてしまいたかった。特別になんかなれないのだ。私は、これからもただ、漫然と大人になり、漫然と人生を続けていかなければならない。意味も価値も分からないままに。そんなのって、苦痛じゃないか。ここはもしかして地獄だろうか。私を苦しめるための世界。どうして。どうして……。
「どうして、特別になれないんだろう」
昔、私は特別だった。
私が世界の中心だと信じていた。
でもそれは、私が、家族から当たり前の愛情を注がれ、当たり前の平和な環境で育ったからに他ならない。つまりは、私は、普通の女の子だった。幸いなことに、恵まれた環境に生れ落ちた、幸せな子供だった。それが、得難い幸運だという事を理解している。でも、だからといって、何だというのか。私は人より恵まれているのだから、苦痛を感じるのは的外れだ。そのはずなのに、どうしてこんなに苦しいのか。
「アン。大丈夫よ。大丈夫」
夜の冷たい風に冷え切ったサリーの身体が、私を抱きしめていた。サリーは、私の頭を優しく撫でてくれた。
ふっくらしたサリーの胸に顔を埋めて泣いていた。歳の割りには発育のよいその胸が、次第に熱を帯びていくのが、なんだか恥ずかしかった。でもそれ以上に心地がよくて、私は泣き止むまでその柔らかさに甘えていた。
「ねえ、アン。特別になりたいよね?」
「……サリーは?」
「わたしも、おなじ。特別になりたいの。ずっと考えていた。わたしね、いい方法を思いついたのよ」
「いい方法……?」
「二人一緒なら、特別になれる。どう? アン。一緒に、特別になる?」
*
二人は放課後まで部活動を行い、ふだん通学では使わない東武東上線O駅へ向かった。
*
ずっと、手を繋いで駅まで歩いた。
誰かとこんなに長い間、手を繋いでいたのははじめてだ。
二人の熱が通って、手はとても温かく、汗ばむほどだった。
サリーが私の手を引いて、どんどん歩いていく。
彼女は、いつからこの計画を思い描いていたのだろう。
何度も予行演習していたみたいに迷いのない足取りだった。
「いい? アン。あのね、こういう計画なの」
暗い夜道は、駅に近づくにつれ街灯が増え、明るくなっていく。
雨が上がって、地面も木々も濡れていて、街灯の明かりを反射してきらきら輝いていた。涙に濡れた視界で、光が揺れて、町全体にキャンドルが飾ってあるみたいだった。
「物語になるの。一緒に」
「――一緒に?」
「そうよ。あのね、一人じゃ全然、珍しくもなんともないもの。二人一緒だから、意味がある。価値をもつ」
「本当に……? 本当にそうなの?」
「安心して、アン。中学生の、女の子。二人で一緒に。どういう関係だったのか、何があったのか、みんな気になって詮索するわ。部活のみんなはいい迷惑かも、でも注目を浴びて悪い気はしないはずよ。悲劇のヒロインを演じる子だっているかも。さぞ気持ち良いでしょうね。でも、そんなの一過性のお祭りだわ。わたしたちは、違う。わたしたちは永遠になる」
サリーは、ぎゅっと強く私の手を握り締める。
私も、同じだけの力で握り返す。そうすると、不安が薄れていくようだった。
「わたしたちの物語を、みんなが好き勝手に想像する。すごい勢いで想像を膨らませるわ。そうしてわたしたちは、この世界に広がっていくの。そのなかで私たちは美しいヒロインになる。そこからいくつもの物語が生まれるの。歌に、漫画、詩や小説。映画や、舞台にもなるかも。わたしたちは、描かれ、演じられ、語りつがれていく。ただ生きていくより、もっと大きな存在感をもつの。わたしたちの物語は価値を付与され、膨れ上がって、いつまでも生きていく。ヒロインになるのよ」
「……一緒に?」
「一緒だからこそ、だよ。だから、怖くなんかない。そうでしょ?」
やっと、サリーが、いつもみたいに笑った。
もう、怖くなかった。わくわくした。
その瞬間を、強く求めた。
みんな見ていて。
わたしたち、すごいんだから。
私たちは一番安い切符を買って改札を通る。
疲れきった社会人たちの合間を縫っていく。
ああ、私たちが、こんな大人のようになることは永遠にない。それは、確かな慰めに思えた。
ホームへ出て、黄色い線を踏み越える。
しっかりと手を繋いで、ローファー越しにアスファルトを踏みしめて、銀色の車体が間近に迫る線路へ身を投げた。
サリーは、堪えきれずに笑い出す。最後の声が聞こえた。
「――さあ、幕が上がるよ」
*
7日夜、東京・板橋区の駅で電車にはねられて死亡した14歳の女子中学生2人について、カバンに残されていたメモにいじめをうかがわせるような記述はなかったことが、警視庁への取材で判明。メモには「将来への不安がある」などと書かれていたということで、警視庁は2人が自殺したとみて動機を調査している。
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