『はだかの王様』って、普通はこうなるんじゃね?

結城藍人

『はだかの王様』って、普通はこうなるんじゃね?

 むかしむかし、あるところに、王様が治める国がありました。


 ある日、王都の町中に王宮からお触れが出されました。


『明日、王様がパレードをなさいます。バカには見ることができない服をお召しになっているので、皆で褒めたたえるように』


 翌日、町の人々が王様のパレードを見学に行ってみると、王様の服は見えません。しかし『バカには見ることができない』とお触れが出ているので、自分はバカだと思われたくない人々は、みな口々に王様の服を褒めたたえました。


 そんな中で、ひとりの男の子が叫びました。


「王様は、はだかだ!」


 それを聞いた町の人たちは、シーンと静まりかえりました。


 もしかして、服が見えないのは自分だけじゃないんじゃないか?


 そう思った町の人たちが、自分も見えないと言おうとしたときです。


 王様が男の子に言いました。


「そなた、余の服が見えぬのか?」


 男の子は元気よく答えました。


「うん!」


 それを聞いた王様は、口の端を歪めて吐き捨てました。


「ならば、そなたはバカだな。余の国にバカは要らぬ」


 次の瞬間、王様の護衛の兵隊が男の子を捕まえました。


「お、お許しください!! その子は正直者で、決して悪い子では……」


 男の子の両親が慌てて王様の前に飛びだして許しを請いました。しかし、王様は言いました。


「愚か者どもめ、バカは悪だ。こやつらも捕らえよ。バカを育てたこと自体が罪だ」


 そうして、両親も兵隊に捕まってしまいました。


 泣き叫びながら許しを請う親子を横目で見ながら、パレードに同行していた大臣が追従笑いを浮かべながら王様に尋ねました。


「処分はいかがなさいますか?」


 王様はしかめ面で言いました。


煮殺にころせぃ」


 親子は、町の人々の前で煮殺されました。


 それから、王様は町の人々に尋ねました。


「余の服をどう思うか?」


 町の人々は声を揃えて答えました。


「素晴らしい服です!!」


 王様は満足そうにうなずいて大臣に言いました。


「うむ、やはりこの服はよいな。バカが誰か、すぐわかる。この国には、もうバカは居ないようだ」


 王様が死ぬまで、この国では王様に逆らうようなバカはひとりもいませんでした。


 やがて、王様が死ぬと、三年もしないうちに革命が起こり、王家は滅びました。めでたしめでたし。

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『はだかの王様』って、普通はこうなるんじゃね? 結城藍人 @aito-yu-ki

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