第34話

「……占い?」

「うん。うらない。」

「……だれが?」

「三年生?」

文化祭の準備をしながら、もりちゃんと話した。

みちくんのクラスは占い館てのをやるらしい。

「できる人いるの?」

「なんかね、すごく当る人がいるんだって。タロットだって!」

「ぇータロット? すごいね。当るのか。やってもらいたいよ」

「あとね、手相とか六星占術? とか、けっこーマニアがいるんだって」


もちろん、ほとんどのヤツはでたらめな占いだけど、ちゃんと勉強してるヤツもいる。いい占い師に当るかどうかも運だよ。と、みちくんは笑ってた。


「山本さんも占うの?」

「そうみたい。詳しい事は教えてくれないんだけど、占う時間が決まったら教えてくれるって」

「おもしろそ一。恋愛運占ってもらわないとね」

私はもりちゃんを見て微笑む。

「なによちひろ、その余裕の笑みは」

「ううん、そんなんじゃないよ。もりちゃん。私いっぱい応援してもらったし、ほんとに助けてもらってるの。だから今度は私が応援するからね」


 もリちゃんは、恋する乙女だ。私は自分のことで精一杯で気付いてあげられなかった。夏休みが終ってすぐに、隣のクラスの男子に恋をしたらしい。

 髪の毛をのばし始めたし、スカートを少し短くして、お化粧も教わるようになった。

 私は、今すぐにでも告白した方がいいと言った。もリちゃんに告白されて断る男子がいるはずないと思った。


「ありがと。ちひろ、誰にも、お願い。誰にも言わないで」


 もりちゃんの弱々しい声なんて、なかなか聞けない。


「だいじょうぶ。みちくんにも、言わないよ」


「ねーちひろー」


 もりちゃんは周りをキョロキョロと伺う


「ん?」


「人を好きになるのって、こんなにしんどいんだっけ……」


 もりちゃんは小さくうつむいた。ため息が、ひとつもれた。


 私は、もりちゃんの気持ちが痛いほどわかった。つい3ヶ月前、私も毎日、しんどかった。そして、姿を見られるだけで嬉しかったし、お話できた日は興奮して眠れなかった。


「うん、そだね」


 私は短く答えた。


「でも、でもね、ちひろに言っちゃって、少し楽になったんだよ。ううん、すごく楽になったの。ありがと」


「ううん、私のほうがずっとずうっとだよ。だいじょぶ。もりちゃん。気持ち伝わるよ、絶対だよ」


「今、なにやってるんだろ……」


 もりちゃんが独り言のようにつぶやいた。


「もりちゃん、私トイレ行きたいんだけど、行かない?」


 もりちゃんはコクン、と頷いた。2人でトイレに行った。


 少し、遠回りをして行った。

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