第6話

「というわけで、明日の放課後は、俺たちと、二年生との練習試合だから。見学とかボールボーイとか、よろしく頼むね」




放課後、今日は部活休みの日にも関わらず、二年マネージャー4人、一年男子2人、一年マネージャー2人が、出席してきてた。


「先輩、今日女子部練習しないみたいです。コートオッケーもらってきました」

「そっか。じゃ、一年も使っていいよ。俺たちも使わせてもらうから」

「あの先輩。」二年マネージャーが言いにくそうに言った。「明日のその試合、結局なんの意味あるんですか?」

「ん? 吉田たちなんか言ってなかった?」

「いえ。なにも言ってくれなくて… それに、一年生も意味わかってないと思うし…」

「宇田川さんもなにも聞いてない?」


岡部がピクっと動いた


「え? はい。全然…」

「そっか。あのね。俺たち3年はこの夏で引退なので、最後団体戦に出たいと思ってるのよ。それには2年の力が必要でしょ。だから、俺たちが勝ったら、真面目に部活やってくれ、とお願いした。そして俺たちは勝つ。だから、少なくとも、夏の大会が終わるまでは、賑やかな部活になるし、毎日しんどくなると思うよ」

「あのすみません。もし、もしも…」

「俺たちが負けたら?」

「…」コクン、とマネージャーが頷いた。一年生4人は一歩下がって話を聞いている


「負けることはないけどね。まあ、あいつらを納得させるための条件はいちおー出した。もともと部員のくせにわけわかんねーけど」


みんながこちらを見ている。負けると思っているような気がする。


「俺たちが負けたら、即引退する。明日から2年の好きに部活やっていいって言った。練習完全自由参加もオッケーだな。」

「ええ? ちょっとなに言ってるんですか!」

「ちょっと先輩!」


二年マネージャーがそろいも揃って動揺してくれて、苦笑いした。よっぽど負けると思われているらしい。おかげで、もう一つ吉田に提案した条件はとてもじゃないけど言い出せなかった。

「だいじょぶだよ。勝つよ。心配なら明日からの練習プログラムでも考えてよ」

「でも…」

「でもじゃないの。明日の試合は大会本番の練習でもあると思ってよ。だからスコアとか備品とか、一年にも教えてあげて。備品も一通りチェックして、足りないものリストアップしておいて」


俺と岡部と一年男子2人は、校外のランニングコースへと向かった

部室の中では、マネージャーが6人残されていた


「やっぱり、言ったほうがいいんじゃない?」

「でも、吉田くんにも、斉藤君にも、言うなって言われてるし」

「だってこのままじゃ、先輩たち、いなくなっちゃうんでしょ」

「でも… どっちの味方もできないよ。先輩たちが決めたことだし」

「ほんとなの? あの話」

「確認した。今年に入ってから、ずっと。」

「だとしたら、やばい、よね」

「やばいっていうか、無理」

「あー! なんでこんなことになっちゃうの!」

「なんとか、やめさせられないのー?」

「でも、2年生たちも、それなりに頑張ってるわけだし」

「お互いに誤解してる部分あるよね」

「ってか、わかり合おうとしてない」

「漫画なら、殴り合って倒れて、やるじゃねーか、お前もなって、握手するとこなんだろうけど」

「いつの時代よあんた」

「ちょっ、ウケるからやめて」

「まあ、いいよ。今までそれなりに私たちも振り回されたし、男子のことは男子にまかせればいんじゃない?」

「たしかに。今先輩たちに言っちゃったら、結果がどう出ても2年には恨まれるよね」

「でも、このままじゃ、明日で先輩たちはいなくなっちゃう」


2年生4人の会話を、1年生2人が意味も分からず、隣で聞いていた。


 あしたでせんぱいたちはいなくなっちゃう


その言葉が、ちひろの頭の中に響いて、大きな刺のような形になって胸の奥に突き刺さった

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