第2話
南高のテニスコートは4面。硬式テニス部が3面使い、1面を軟式テニス部が男女で使っていた。とは言っても、男女とも開店休業のようなものなので、いつも岡部と俺が使っていた。
ランニングから帰ると、硬式テニス部の隣で、マネージャーたちが制服のままテニスをしていた。
ほのぼのとした光景だった
「おーい。コートあけてー。岡部、入って」
「え? もう?」
「そう。もう。」
いつもなら休憩してから練習に入るから、マネージャーたちも不思議そうな顔でコートから出ていった
「あ、ごめん。ボール持って来て。そんでもし暇だったら、ボール拾ってくれるとスゲー助かるなあ」
マネージャーに言う。
あ、はい。と言ってボールを持ってきたマネージャーが
「なんかあったんですか?」
と聞いてきたので
「ちょっと、特訓。試合しようと思う」
「え?試合! いつですか? どこと?」
「すまない。後で話す。特訓が先」
はーい、と言ってマネージャーは下がって、そのままボール拾いに入ってくれた
そのまま10分間、岡部のストローク練習をした。徹底的にフォアハンドの練習。あらゆる角度、距離からのボールを叩かせた。
岡部はバックハンドが決定的に弱い。しかし、フォアハンドは確実で、強い。ランニングで下半身をいじめ、回復しないままの状態を見た。
しかし、乱れがなかったから、これは、思った通りだった。
休憩にして、そこにいたマネージャー2人に、2年男子と試合するかも、と話をした。
「なんでですか?」
と、少し驚いた顔をした
「練習来ないから?」
「そーゆーわけじゃないけどな。ちょっと、思い知らせてやろうかな、と。1年も入ったし、とね」
「えーでも、先輩負けますよー」
「お前は、どーしてそう、言いにくいことを」
「えだって、吉田くんたち、県16ですよ? あの、南中の一番手コンビですよ?」
「1年以上ブランクあるしな、こっちはそれなりにやってきてるから大丈夫だよ。それに、団体戦には、あいつらが必要だろ。」
「団体出るんですか?」
「ああ。俺たちが勝ったら、真面目に部活やれってね。」
「で、負けたら…?」
「あ?」
「いや、もし、もしですよ、先輩が負けたら、どーするんです?」
「負けねーよ。勝つよ。」
「でも、先輩が勝ったら、吉田くんたちは部活やるんですよね? 吉田くんたちが勝った時の条件もないと、やらねーよってことになりません?」
「あ、ああ…じゃ、吉田たちが勝ったら、団体戦あきらめるよ」
「それ、出るつもりない吉田くんたちにはなんのメリットでもないです。もともと、ヤル気ないのに、吉田くん達にメリットないなら、まずやらないと思うんですけど…」
「言われてみればそうだな。」
岡部が頷く「言えば相手してくれると思ってたな」
「そ、それは今日考える。明日、2年の教室行って、挑戦状叩きつけてやるっ!試合は明後日。新入部員のいる前で行うぜ」
「おもしろそー。楽しみにしとこーっと。じゃあ、私達帰りますね。お疲れ様でしたっ!」
「負けた時の条件か…」
なんで部員同士の練習試合なのに、そんな苦労しなきゃならないんだ、と腹が立ってきた。
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