第8話
翌日、誘拐グループの仲間になった酒井は、さっそくカモを探しに近くの小学校へ向かった。
ちょうど終業のチャイムが鳴り、校舎からたくさんの生徒が出てきたところであった。
「ちょうどいいや。この中から誰かさらってこようっと。えーと、どのガキにしようかな~」
と、酒井が迷っていると、突然一人の男子が話し掛けてきた。
「おい、何やってんだよ。怪しいやつだな。誰だよ、お前」
「怪しい者じゃないよ。私は酒井舞由李――あっ!名前言っちゃいけないんだった!」
酒井は慌てて校門の前まで逃げて行った。
しばらくそこで様子を窺っていると、一年生くらいの女子が一人で歩いてくる姿が見えた。
見た感じ、とてもおとなしそうである。
酒井はチャンスとばかりに話し掛けに行った。
「ねぇ、お嬢ちゃん。おやつあげるから私についてきな」
「やだ…」
小さな声で女の子は言った。
酒井は目を丸くした。
「なんで?!おやつだよ、おやつ!」
「やだ!」
「じゃあ、おもちゃ!」
「やだ!」
「じゃあ、漫画!」
「やだ!」
「じゃあ、ゲーム!」
「う~ん……いいよ」
ようやく女の子は付いてきてくれた。
酒井は女の子をつれて秀くん達の車がとめてある駐車場へと向かった。
「遅かったな、舞由李」
酒井の姿に気付き、車から秀くん達が出てきた。
「ねぇ、この人達誰?あんたの家に行くんじゃなかったの?」
訝しそうに尋ねる女の子。
「何言ってんの、ここ私の家だよ?」
平然と酒井は答える。
「は?このボロ車が?」
「ボロ車とはなんだ!」
秀くんが怒ったので、女の子は怖がって逃げて行ってしまった。
「あ~あ…せっかく捕まえてきたのに」
秀くんはみんなから白い目で見られたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます