第6話 12月現在Ⅱ

 のーちゃんは、今日も私の近くに佇む。そう佇む。

 私が動くと、一緒に移動する。私が止まれば、一緒に止まる。

 私がけやきを見上げると、のーちゃんも見上げる。

 大抵は見える位置でフワフワしてる。

 

 あなたはいったい誰?

 

 私の魂がかなり低いレベルになったから、感銘したのかな?

 きっと、あなたは、私のように寂しくて、私のように冷めていたのかな。

 だから私に見えるのかな。

 だから、そばにいるのかな。

 いつか私をあなたの世界に連れて行くつもりなのかな?

 

 けやきはすっかり丸坊主になっている。

 私はのーちゃんと共にけやきを眺めた。

 あんなにフサフサだった葉はもう一枚もない。

 

 青い葉が人生全うしないうちに落ちたとき、かわいそうだと言った倉橋。

 「どうせみんな散る。運命だ」私はそう答えた。この季節になれば、みんな同じ。早く散ったから何? 

 もう、同じだよ。

 

 フサフサだったハタキたちは、竹箒を逆さにしたみたいに骨だけになってそびえ立つ。 寂しそうに、寒そうに。

 

 フフフ、私こんなところじゃ死なないよ。

 人が多すぎる。それにけやきで首くくろうなんて、思ってないから。

 第一、首つりは上からも下からも、水分という水分が垂れ流しになるって聞いた。そんなみっともない死に方はしたくないよ。

 

 のーちゃんは、私を連れて行く機会を狙ってるんだろう。

 あの時……現れたんだから。

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