お泊まり!
「ここが僕の家だよ」
そう言って、ゴンちゃんはとある一軒家の前で立ち止まりました。
そこは、酒井が先ほどお邪魔した、堀川権蔵の家に間違いありませんでした。
「ふ~ん、子供の頃から住んでたんだ。どうりでボロ屋なわけだ」と酒井は偉そうに文句を言いました。
「そういうてめーの家はどうなんだよ」とゴンちゃんは言い返しました。
「私の家は豪邸だよ」と酒井は平然と答えましたが、実際ボロアパートに住んでいるのでした。
すると、玄関から女の人が出て来ました。
「あっ、ママ!」とゴンちゃんが叫びました。
「ゴンちゃん、その人誰??」
お母さんは訝しそうに酒井を見ました。
「さかいまゆりっていうんだって」とゴンちゃんは説明しはじめました。
「あら」とゴンちゃんのお母さんは目を丸くしました。
「男の人かと思った」と、何気に失礼なことを言っていました。
「ねぇ、ゴンちゃん」と、酒井はひとつ気になってゴンちゃんに聞きました。
「あんた、ママとか呼んでるけど、今いくつなの?」
「11歳だよ」
「ふーん。そのわりにチビだね」
「うるせぇ、デカ!お前がでかすぎんだよ!バーカ!」
「ゴンちゃん!なんなの、その言葉遣いは!」
母はゴンちゃんの耳を引っ張りました。
「痛てててて…やめてよ~ママ~!」
「だっせー」と酒井は呟きました。
少し場が落ち着いたところで、酒井は切り出しました。
「というわけで、私、今夜ここに泊らせてもらいますから」
しかしゴンちゃんママは困ったように眉を寄せ、
「だけど、泊る部屋がないわ」
「あるよ!」
ゴンちゃんが叫びました。
「え?どこ?」
ママが尋ねます。
するとゴンちゃんは得意げに、
「トイレ!」
と答えました。
「は?!誰がトイレで寝るか!つーかどうやって寝るんだよ!」
酒井が怒ります。
「便座に座って寝ればいーじゃんか」
ゴンちゃんが笑いながら答えます。
「やだよ!廊下で寝た方がよっぽどマシ!」
酒井が文句を言うと、
「じゃ、そうしなさい」
と、ゴンちゃんママがにっこり笑って言いました。
「わかったよ。そうする」
酒井は渋々頷きました。
その夜、酒井は中々寝付けませんでした。
「私、これからどーなっちゃうんだろう?」
と、玄関マットの上で寝ながら考えていると、突然二階から寝ぼけ顔のゴンちゃんが降りて来ました。
ゴンちゃんはそのまま、「トイレ…トイレ…」と呟きながら、トイレに入って行きました。
それから、およそ十秒後のことです。
「わぁぁああああ!」
トイレの中から、ゴンちゃんの悲鳴が響いてきました。
びっくりして酒井が様子を見に行くと、下半身丸だしのゴンちゃんが見事にケツから便器にはまっていました。どうやら便座を上に上げた状態のまま便器に座ってしまったようです。
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