酒井、ゴンちゃんを助ける!

酒井は30年前の町並みを歩いて散歩していました。


「あ~あ…つまんな~い。30年前ってつまんないものばっかり。どっかにゲーセンないかな~」


と、独り言を言っていると、30メートルほど前方に、先ほど会ったゴンちゃんを見つけました。


「ゴンちゃーん!」と声を掛けましたが、無視されてしまいました。


「おい!堀川権蔵!」と、フルネームで呼び直してみましたが、やはり無視されました。


ゴンちゃんはそのままどこかへ走って行ってしまいました。

酒井はこっそりと彼の後を追いかけていきました。

いきなり飛び出して行って、驚かしてやろうと思っていたのです。


あとをつけてから、2,3分が経過しました。


すると突然、ゴンちゃんの目の前に数人の男子中学生達が現れました。

どうやらゴンちゃんは、その中学生達にからまれているようです。

酒井はしばらくその様子を隠れてじっと見ていました。


「おい、権蔵!お前、金持ってんだろ!貸せよ!」


中学生の一人が脅すように言いました。

ゴンちゃんはビクビクしながら言い返しました。


「や…やだよ~。ボクんだもん!」


「な~にが“ボクんだもん”だ!生意気なんだよ!ハゲ!お前野球部にでも入ってんのかよ?」


「違うやい!ボクが入ってるのはサッカー少年団だもん!」とゴンちゃんは得意げに言いました。


「は?意味わかんねー!」と不良中学生は言いました。


「野球部でもないくせになんで坊主頭なんだよ!」


「知らないよ!」


「は?自分でもわかんないのかよ?つーかさっさと金出せよ!」


「ヤダ!」


「何だと?おい、みんな、コイツに思い知らせてやれ!」


中学生達はゴンちゃんをリンチし始めました。


「いたいよ~!やめてよ~!」


酒井は影でそれを見ながら、密かに「堀川ダッセ~」と思いましたが、あまりにもゴンちゃんがみじめなので、仕方なく助けてやることにしました。


「うえ~ん!うえ~ん!」


ゴンちゃんは泣きだしました。


「泣いて許してもらえると思ってんのか!ふざけんな!金出すまでいじめてやるからな!」


「うえ~ん!うえ~ん!ママ~!」


「ちょっと、ちょっと!あんた達!」


酒井は仲裁に入りました。

中学生達はギロリと酒井を睨んできました。


「なんだ?オバハンもリンチされてぇのか?」


「“オバハン”とは生意気な!このクソガキ!」


酒井は腹を立て、中学生達を一人一人蹴り倒していきました。

そして、ようやくゴンちゃんを救いだすことができました。


「なんだよ、お前なんでここにいるんだよ?」


ゴンちゃんは不思議そうに酒井を見つめています。


「なんでって、そりゃ…ずっとあんたを尾行してたから」


ゴンちゃんは些かドン引いているようでした。


「そうそう」と、酒井は得意げに言いました。


「あんたの本名、堀川権蔵っていうでしょ」


「えっ?」とゴンちゃんはかなり驚いているようです。


「なんで知ってるの?」


酒井はふふんと鼻を鳴らし、「ヒ・ミ・ツ」とウインクしました。

ゴンちゃんはまたまたドン引いているようでした。


「あ、そうそう」と、酒井は再び話し始めました。


「私、今日泊まる家がないんだよね。あんたの家に泊めてくれない?」


「は?!なんで泊まる家がないんだよ?」


「事情話してもいいけど、頭の悪そうなあんたには理解できないと思うよ」


「じゃあ、言ってみろよ」


「あんた、タイムスリップって知ってる?」


「なにそれ?」


「やっぱ知らないか。じゃ、いいや」


「なんだよ。気になるじゃんか」


「私を今夜あんたの家に泊めてくれたら教えてあげてもいいよ」


「ちぇっ!わかったよ」


ゴンちゃんは酒井を家に泊めてやることにした。

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