第2話

ベルト着用のサインが出て、平均的なルックスのキャビンアテンダントが機内を見回っていた。

金曜日の羽田行きは、半分ほどの座席が埋まっていた。仕事っぽい人が多い


「いかがでしたか?宮崎は」

「ええ。暖かくて、とても好きです。仕事でなければ言うことないんですが。」

「よく来られるんですか?」

「つい先月、こちらの取引先の担当になったばかりで、今回が2度目です。1人で来たのは初めてで。これからは1、2ヶ月に一度は来る、かなあ」


ふうん、、、と、思った。


「ええと、東京の方?」


言葉が、綺麗だと思った。


「ええ。今は」

「いまは?」

「出身は群馬です。群馬県。ご存知ですか?」

「ええ。少し」

「よかった。東京へは仕事の関係で5年前に出ました。結婚もその頃に」

「ご結婚されてるんですね」

「息子が2人います」


くすっ。


「一緒ですね」

「あははっ。私は歳相応ってとこですから」

「おいくつなんですか?」

「38です。今年で9かな」

「え?」

「あれ?おかしいですか?」

「いえ、ごめんなさいあの、息子さん、、、」

「え?あーっ! そうか、そうですよね! 私の歳なんかどーでもいいですよね、つい、、、」


つい、なんだろう?


「大変失礼しました。5歳と、4歳です。としごですね」

「可愛い頃ですね」

「ええ。それはもう。、、、何歳ですか?」

「えーと、、、」


少し考えた


「28です」

「やっぱり、お若い。」

「娘は、3歳と2歳で、おなじくとしごです」

「それも同じですね。なんだか嬉しいなあ」


すうっと、会話が重なった。心地よいリズム。

おそらくたまたまではなくて、彼が私に合わせてくれた。

この人とは、話してて楽しいかもしれない。そんなことを考えていた。


「女の子、可愛いでしょう?」

「ええ。すっごく。」

「母親似ですか?」

「そうですね、私に似て、生意気で」

「あは。母親似なら美人ちゃんですね。」

「あら。ありがとうございます。女の子って早いから、手を焼くことも多いんですけど」

「そうみたいですね。オシャレなんかも意識しはじめたり?」

「あー、もう、気に入らないと洋服も着てくれなかったりします。まったく、、、」

「母親似、ですか?」


首を斜めにして、下から私を見上げるような仕草を、彼がした


「私がかわいいと思っても、ダメなものはダメで、言い出したら聞かないんです。二人して」


彼は、もう一度同じような仕草をした


「私に似て、ね。」


私は彼の目を見て微笑んだ。

くすり。

彼は眉毛を上げて、微笑んだ。にこり。


どきり。


私の中のどこかで懐かしい音がした

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