第6話Separately 夫々
6.
(大倉由宇子が水谷あかねから聞かされた更なる馬場真莉愛との話)
6.
真莉愛と私は背中合わせで座っている。
広いオフィスの中、メインが内勤の私達は営業の人たちが出払うと
時々2人きりになるときがある。
2人きりと言っても厳密には違うけれど。
……というのも離れたシマにはパラパラと人がいるから。
ただし内緒話が届かないくらいは離れているので
そういう意味でふたりきりの時があるのだ。
そんな周りに人がいなかった日のこと。
「ねぇねぇ、水谷さんっ♪すごいもの見せてあげましょうか」
「すごいもの? なぁ~に?」
この子の言うすごいものって、何だろう。
頭のネジが1本抜けてる子のすごいものって……怖過ぎる。
何って一応聞いては見たけど、見たくないよねぇ~
できるものならば。
前々からちょい変なヤツ認定はしていたけれど、この間の
大倉係長に夜這いをかけた発言以来、さらに私にとって
要注意人物になっている。
正直なところこんなやつと2度と一緒の出張なんてごめんだ。
「わたしぃ、ブログやってるんですけどぉ~もう我慢できなくてぇ~」
我慢出来ないことが多過ぎやしないかいっ……。
「……」
「ついにブログにYoutubeをupしちゃいました」
「それって動画のことよね?」
「ふふっ、今ブログのページ開けてるので見てみませんか。
これこれっ!」
「何これ……この映像あなたが撮ったの?」
「ふふっ、内緒ですよ? シーっ!」
「シーって、シーって・・こんなもの公のYoutubeにuoloadするなんて
だめだよ、真莉愛ぁ」
「すぐ消しますってば、水谷さんや親しい人にだけですよ。
見せたらすぐっ消すつもりぃ」
6-2
「それにしてもたくさんよく撮れたわね」
「えへへっ、愛ですよっ……愛Love」
「あなた、こんなに何度も大倉係長が残業してた時に一緒に
いたのね。
それもびっくりだわ。
いつの間に。
ねっ、悪いこと言わないから早く削除しなさい。
あなたは気にしてないけど、大倉さんや奥さんが見たら不快な
ものだよ?
それに周りの見た人たちに誤解を招くと思うわ」
「水谷さんってばぁ、真面目に捉え過ぎですよぉ。
好きな人のこと観察したり撮ってみたり誰だってしたくなりますってば」
「な・り・ま・せんっ」ンとにもう何言ってるんだか。
「水谷さんはもう結婚しちゃってるから、乙女の恋心が理解できなく
なってるんですね。
それとも年齢的なものなのかなぁ?」
「ンまぁ~、なんですってぇ~ 真莉愛」
私は真莉愛をどつく振りをしてその場はそれでやり過ごした。
もうほんとに何をやってるのか、ただただ呆れるばかりだった。
それと、本当に削除したのかどうか、怪しいもんだわ。
真莉愛のブログにupされていた動画は、大倉さんと真莉愛との
会話入りのもので、ふたりが残業している日のものだった。
真莉愛は信じられない言葉を大倉さんに投げ付けていた。
ふたりはすごくリラックスしている風だった。
内容からして明らかにあの出張の後のモノだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます