のみすぎとカエルの魔眼

アニサキスによりレントオール氏の体調がどんどん悪化していくので、マッチポンプ式にヒールを施し、ダンジョンの外に出ることにした。ウチのクソカエルことヒキニートは案の定MPが尽きており、出口はまだか、早く帰りたいを連呼していた。

途中、健さんが「ヒキニート殿、もしやカエルと帰るを掛けているんですかの?」と突っ込んでいたが、華麗にスルーされていた。


私の鞄の中には、ハヤグイなんとかから貰った古代のオーパーツが入っている。

ロストテクノロジーで作られた大変に強力なアイテムらしく、冒険の足しに使って欲しいと丁寧に梱包までしてくれた。これからは心を入れ替えて食い逃げはせず、大食い大会にしか参加しないと言っていたので警察には突き出さないでおくことにした。


「警察に引き渡さなくていいのか?」と全裸のメンバーが言ってきたが、ハヤグイなんとかが「これを…」と小声で言って私にそっと何かを握らせてきたので全力で庇ってやったのだった。サイズや感触からしてきっと宝石か何かだろう。

女って弱い生き物だ。



――― 1時間後 ―――


ダンジョンを出て病院の緊急外来にレントオール氏を搬送した私たちはくたびれ荘に戻ってきた。お帰り、一杯飲んでいくか?と陽気に声をかけてくるマスターの輝さんを疲れているからと言って避け、モザイク忍者の部屋に集合しお礼の包みを開けることにした。酒を断るとか普段の私からはちょっと挙動不審な気もしたけど、輝さんにはきっとバレていないだろうって信じてる。


「さて、開封開封っと。」

「ちょっと待て、古代兵器から貰ったアイテムだぞ。鑑定とか要るんじゃないのか?」

「わしが見た限り大丈夫な気もしますがの…。」

このパーティには鑑定持ちはいないので、健さんの鑑定はもちろん適当だ。

うちの斥候こと忍者100%に薄い期待をかけてスキルを持っていないかを聞いてみたものの、「素早さに関係のないスキルは取っていない」と断言された。ですよねー。


「そこで真打、俺様の参上だケロ。この俺様が華麗なる魔族のスキルで貴様たちの悩みを解決するでケロよ。魔眼!」

目が赤く光ったヒキニートは箱をひょいと手にとり、じっと見つめ始めた。

「ヒキニート殿、やればできる方だとわしは信じておりましたぞ!さぁ、早く箱の中身を教えてはくださらんかの?」

揉み手をしながら健さんがヒキニートにすり寄っていく。


「で、罠とか毒とかあるの?」

「…気が散るから何も出来ない小者は黙って見ているでケロ。」

相変わらずイラッとくる発言に思わず拳を握ったが、もし開封してトラップがあった時の盾がわりがいなくなってしまうのでここは少し我慢することにした。



「こ、これは…俺様に相応しい素敵なものだケロ!」

そう言うとヒキニートは、皆が制止する中、勢いよく梱包を剥いたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る