のみすぎと寄生虫

ひとしきりしもべちゃん(ゲソ足)を踊り食…いや、堪能したハヤグイは大きなゲップと共に立ち去ろうとした。

が、小刻みに痙攣しだした。

「き、貴様たち何を盛った…!腹が、腹が痛いぞ!!」

ピンチでも随分なイケメンボイスだ。

次の瞬間、大きな音と共に地面が一瞬揺れた。

「な、なによ今の揺れ!?」

「おい、あれを見ろよ。」

体が宙に浮き、上から全裸ボイスが聞こえたと思ったらお姫様抱っこをされていた。

大切に扱ってくれたのはありがたいが、このメンバーが変態なことが非常に悔やまれる。遺憾の意だ。

だけど一応お礼は言っておくことにしよう。人として。

「ありがとう。さて、よっこい庄一。」

「それわかる奴いるのかよ…。」

脱力する全裸忍者の腕の中から降りて音のした方向を見ると、直方体が地面に転がっていた。痛みを堪えきれなかったのか、宙に浮いていた体が地面に落下したようだ。

今回は戦わずしてクエスト終われるんじゃないかこれ。


「揺れたでケロ!もう俺様はおしまいだケロ!俺様、地震は電池切れの次に怖いでケロ!」

ちょっとした揺れごときでSEKAIのOWARIのように騒ぐヒキニートの声に混ざって

「誰か、薬を、薬を…!!」

という声が聞こえた気もするけど、きっと、気のせい。

「おい、そこに転がってるレントオール氏どうすんだよ。流石に依頼主放置はダメだろ。」

「私が成人男性運べると思うの?」

「だよなぁ。」

肌色忍者は小さく溜息をつくと、レントオール氏を背負ってゲソの方向へ戻っていった。レントオール氏は心から泣きそうな顔をしていた。


「うぉぉぉぉぉぉ!!」

痛みを堪えきれないハヤグイがごろごろと転がりながら獣のような咆哮をあげた。

無機物なのに脂汗出てるぞ。

ひょっとして…アニサキス?

しもべちゃん、寄生虫感染していたのか。

「イカには寄生虫がつきものケロな。」

私の収入に寄生している両生類がドヤ顔でコメントしてきた。

無視だな。

まてよ…これは久々のいいギャグかもしれん。

私は思わず笑みがこぼれそうになった。

「おっと虫と無視をかけようとしているのか。」

見逃してくれよ!いつも全裸見逃してるんだから!

「一瞬の隙も見逃さないのが忍び。」

心の声を察知したような返事が返ってきた。ニュータイプか。

「ネタが無いからといって安易なギャグに走るのはよくないですぞハゲマント殿。」

健さんどこから出てきたんだよ。放っておいてくれよ!!

「で、貴様はどんなギャグを思いついたでケロか?どうせつまらないだろうが寛大な俺様が披露の場を与えてやるでケロよ。さ、申すがいいでケロ。」

私の辛そうな顔を察知したのか、絶妙なタイミングでヒキニートが煽りに来た。



「お、私を無視するな…!!」

悲痛なイケメンボイスが空間にこだました。

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