のみすぎと腐敗臭

通路の向こうから夏場に4日ほど放置した圧力鍋のカレーのような臭いがする。

スパイシーさと、たんぱく質が分解するときの苦さと、古ぼけた果実の変なベタ甘さが混ざった胃酸を刺激する臭い…つまり腐敗臭だ。

それが下水道本来の臭いとコラボしている。

「ウッ」

あまりの臭いに思わず顔をしかめる。いかん、涙が出てきた。

強度の刺激臭は、目にくるのだ。

吐きたくなる気持ちを抑えながら通路の向こうに進むと、出前の丼や動物の骨、お菓子のカップや酒瓶が転がっており、足跡のように前へと繋がっている。

どこのヘンゼルとグレーテルだよ。

「ある意味、わかりやすいですな。」

「ウップ、そうですね。」

「食い方が汚いな。」

「クッサー!!俺様のケータイが臭いで壊れるでケロ!」

お前はこんな時までケータイの心配か。

ケータイ壊れるかわかんないけどブレないなぁ。

健さんと全裸はこの臭い平気なのか…と彼らの方を見つめると

健さんは…

「わしは鼻炎持ちじゃからの!」

どんだけ鼻炎ひどいんだよ!

全裸は…

「忍者だからな!」とサムズアップしてきた。

「うぜぇケロな…。」

カエルが代わりに反応してくれた。


「わ、私そろそろ催しそうです。ウップ…。」

レントオール氏の顔色が赤から紫へとグラデーションしていた。

「も、もうちょっと頑張って!」

やめて!落ちゲーの要領で貰いゲロを連鎖するから、やめて!!

と心の中で叫びながら、私はレントオール氏に肩を貸しつつ

汚い足跡を追うのであった。


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