のみすぎと大人の品格
レントオール氏の後ろをついていきながら、私はもう一人の勇者候補に話しかける。
「あのさぁ、さっきの健さんの話あれってホント?」
「お前、本気で知らなかったんだな…。」
頭巾から私を見つめる目が、かわいそうなものを見るようだった。
視線が痛い。
「いや、私は母の代わりで王城に行ったら成り行きで登録することになっただけだし。そもそもなるつもりなかったし。」
「まぁ、俺は前職もこういった汚れ仕事だったからな。今更勇者候補になったところで特に暮らしに変化はないな。強いて言えば、くたびれ荘所属になって飯のクオリティが上がったくらいか。」
忍者はぶらぶらしながらあくびをした。
「速い奴に遭えるのが楽しみ過ぎて、昨日寝てないんだ俺。」
遠足前の子供のようなセリフを吐いた。
体はもう立派な大人なのに。
まぁ、男なんて幾つになってもそんなもんだ、と最近結婚した友達がドヤ顔で言っていた事を思い出し、心の中だけで軽く凹んだ。
だって仕方ないじゃん、適齢期だもん。
「まったく貴様は子供ケロか。もうちょっと俺様のような落ち着きのある大人の品格をだな。ああっ、貴様そっち側に立つなケロ!俺様が見切れるではないケロか!」
凹んでいる私を尻目に、相変わらずの上から目線でヒキニートが忍者に話しかけていた。そしてカエルはその手に、ケータイを括り付けた変な棒を持っていた。
なんだろうあれ。
「なんだよその変な棒。」
全裸ナイス。よく突っ込んだ。
「自撮り棒だケロよ。そんなこともわからないケロか、これだから人間という下等種族は。」
やれやれといわんばかりのポーズでカエルが説明してきた。
「やれやれなのはこっちですよ。上司の命令で案内するこっちの身にもなってください。」
「ほらほら皆さんもう立派な大人なのじゃから、レントオール氏を困らせてはいけませんぞ。」
健さん、さっきまでどこ吹く風のような態度だっただろ…。
白目を剥くような表情で健さんの方を見ると、慌てて話題を逸らすように言葉を続けた。
「ところで、何か変な臭いがしませんかの?」
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