のみすぎと底辺職
思いっきりダッシュしたせいか、何かにぶつかったようだ。
肉のような弾力がある。まさかいきなりのエンカウント…!?
恐る恐る手に持っていた懐中電灯で照らすと、黒光りする困った笑顔のおっさんが浮かび上がってきた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
あまりの怖さに私はその場で腰を抜かしてしまった。
「ななななにがあったでケロか!?」
「敵襲か?」
「ハゲマント殿!?」
私の悲鳴を聞きつけ、残りの3人が階段を下りてくる。
「そんなに驚くとは、失礼ですな。」
よく見ると、先程別れたレントオール氏だった。
夏の怪談ではなかった。
「えっと、そのまま見送ってはみたのですが、外部の人に頼んでいて変なところに入られたらどうすると上司から叱責を受け、案内のために来ました。」若干口を尖らせながら話し出した。
「何かヤバいものでも隠しているのか?」
市が隠す下水道の秘密よりもヤバい恰好をした男が質問してきた。
「ヤバいという訳ではないのですが、この街の下水道は入り組んでおりまして正確な全体の地図が仕上がっていないんです。そのため過去に行方不明者が相次いだことがあり最近は局員の安全のため冒険者の方を雇うことにしています。」
「局員の安全のため冒険者を雇うって…。」
「ハゲマント殿、冒険者が全て勇者候補ではないのですじゃ。職安で仕事がなさすぎて冒険者になる者もおりますじゃ。つまりは、そういうことですじゃ。」
健さんが私に言葉を濁しながら冒険者の説明をしてくる。
あ、なんか察した…。
もしかして、冒険者って実はなったらヤバい仕事なんじゃないの!?
私、あのハゲ王に完璧に嵌められたんじゃないの!?
じゃあ勇者候補っていったい何なんだよ!説明なかったけど!!
ただのブラック派遣業ってこと!?
いや、底辺オブ底辺職か!?
絶望と怒りが腹の中にふつふつと沸いてくる。
このクエストから帰ったら、職安に意味のないクレームで長電話キメてやる!
1か月にクレーム50件くらいのペースで頑張ってやる!
やり場のない怒りを胸に、私はレントオール氏の案内のもと下水道の奥を目指すことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます