のみすぎとレベルアップの妄想

全裸忍者が二つ返事で受けてしまったクエストの詳細はこうだ。

BAR・不毛地帯に現れた連続食い逃げ犯、ハヤグイ・ガシュミダを捕まえるべく

街の下水道に入って奴のアジトを調査して、可能であれば捕まえてこい。やむを得ない場合は倒しても構わない、だそうだ。下水道内で見つけた高額の落し物は、警察で一定期間保管した後、持ち主が見つからなければ見つけた人に権利が委譲するのでその際に換金するなり好きにしてくれということだ。実にシッカリしていることで。

輝さんからの報酬は、マニア垂涎のレア酒「大吟醸・褒めごろし」だ。

ツケがある以上、現金ではないのが悔やまれるがその酒はレアい。実にレアい!

仕方ない、やってやろうではないか。とニヤニヤしながら狸の皮算用をしていると

「ふぅ。女よキモい百面相をするではないケロ。表情筋を鍛えたところでシワは取れないでケロ。やれやれこれだから周りに配慮ができないBBAは。」

「おめーのせいでシワが増えるんだよ!!」

私は親指を内側に折り込んで拳を振り下ろした。

「イテテ…俺様の賢さがまた1ポイント下がってしまったではないか。」

「ポイントってなんだよ。ゲームばっかりやってるから現実を直視できないのよ!」

「まぁまぁハゲマント殿、そのくらいで勘弁してやってはどうかの。わしがまだ若かった頃は、レベルアップによるステータス制は採用されていたのですじゃ。」

なん…だと。

「だが、レベルアップによるステータスの上昇は、妄想にしかすぎんという話になってな、レベルという概念が消えたんだよ。」

「あれっ、輝さんまだいたの!?てか、なんで消えたの!?」

おいおいそれはないだろう。と溜息をついたあと、

あぁ、それか。と輝さんは続けた。

「古代文明の遺産を利用した測定器が昔はあったんだが、測定時の数値が自己申告な上に、レベル:まぁまぁ、とか、レベル:ヘタレ、とかの超いい加減な感じでな。おまけに登録料が高かったんで、それなら要らんわといういう話になったんだよ。俺はまぁ割と高レベルだったんだがな。」

さりげなく輝さんが自慢を挟んできた。このオヤジは。


「…で、俺たちはいつ下水道に潜りに行くんだ?」

痺れを切らしたのか、高速で貧乏ゆすりをしながら忍者が聞いてきた。

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