のみすぎと騒ぐ忍びの血

ほどなくして、部屋に駆け込んで行ったカエルが猛スピードで戻ってきた。

「健さん、よくも騙したなケロ!!!!」

顔を真っ赤にしながら涙目になっている。

「ほっほっほ。ヒキニート殿はまだ成人していないゆえ、大人向けの銀行券はちと早いと思いましてのぅ。これは失敬失敬。」

健さんやるな、さすが年の功。

「おう、なにやら騒がしいな。そろそろ晩飯か?」

ウチのメンバーの残り一人が登場した。

頭巾を被った全裸忍者、ム・シュウセイだ。

コードネームは「神速のモザイク」という。

素早さが下がるからという理由で頑なに服を着ない。なに、もはや仕様だ。

初めて見た時はねぇこれアリなの!?とヒキニートに聞いたことがあるが、

忍者は全裸で当たり前だろJK(常識で考えろ)とかいってきた。解せぬ。

なぜ女キャラではなかったのか。そうしたらいいサービスになったのに。

「ねぇくのいちも全裸なの?」

と期待しながら、このMOROCHIN忍者に尋ねたところ

「あぁくのいちとは女装する男忍者のことだ、残念だったな。」

と返ってきた。本当に残念だよ。

メンバー紹介はこのくらいにして、そろそろ本題に戻ろう。

「おぅ、お前ら揃ってるみたいだな。」

相変わらずのタイミングの良さで宿のオヤジこと輝さんが登場した。

絶対皆が揃うのを狙って食堂に入ってきてるだろ…と邪な考えが一瞬浮かんだが

クソカエルと違って私はもう立派な大人なので黙っておくことにした。

「今日、ウチの店に食い逃げ犯が出た。巷を賑わせている連続食い逃げ犯、

ハヤグイ・ガシュミダだ。あいつはなにせ素早過ぎて今まで誰も捕まえられたためしがないんだが、今回警察の調べで下水道を根城にしているらしいことが発覚した。

そこでお前らに頼みなんだが…。」

と輝さんが次のセリフを言いかけた矢先、

「俺よりも早い奴がいる…だと。それは忍びの血が黙っておれんな。輝さん、この依頼受けるぞ。お前らもついてきてくれ。」

全部聞く前に全裸忍者が受諾の返事をしてしまった。

いつもは冷静で恰好以外はまともなのに、速さが絡むとどうしても血が騒いで我慢できなくなるらしい。

だよなぁ、速さに拘って服着ない宣言するくらいだもんなぁ…。

あとの2人も同じように思ったのか、ガックリとうなだれていた。

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