のみすぎとゴブの片棒
肌色に怯えたボスに忍者はこう続けた。
「大丈夫だ、手荒なことはこれ以上何もしない。先程のお前の話を聞いて気の毒に思ったのでな、盗んだ物を返す代わりにお前たちの身分証を村人に返却するようこちらから申し出ようじゃないか。悪い話ではないと思うがどうだろうか。」
ボスはカッと目を見開いて、嘘だろ…いや、だが…と小さくつぶやいた後、
「俺はともかく、残りの皆の身の安全は保障できるのか?」
と続けてきた。
「あぁ、俺たちが保障しよう。みんなもいいよな。」
ヒキニートだけ後ろでこっそりと中指を立てていた。お前って奴は…。
「約1人反対しているようなのだが…。」
「あっ、大丈夫ですよ。」
と言いながら、私はヒキニートの頭に思い切り拳を振り下ろしておいた。
とはいっても、ゴブ達の身分証を取り返すとは言ったけど結構な人数がいるし、そもそもゴブ達の証言だけだと薄いのよね。村ぐるみで知らぬ存ぜぬをされたり、下手したら私たちだって口封じに殺されかねない。
「何か村人の弱みがあれば話は別なのですがな…。」
健さんも同じことを考えていたようでホッとした。
「弱みとはいってもよぉ…。おい、お前ら。誰か村人の秘密を知ってるやついるか?」
ボスは部屋の外にいる仲間に何か声を掛けた。
一瞬周りが騒がしくなったが、おそらく、こいつら信用していいのか、とか村人の弱みなんて知らないとか言っているのだろう。
ボスがゴブ語であろう言葉で返事をすると、皆どこかに行ってしまった。
「大丈夫だ心配するな、いつも通りに動いてくれと言っただけだ。
俺が早とちりして襲い掛かって縛られただけで、この人たちは俺たちの脱出に力を貸してくれる人達だと言っておいたから、これで洞窟内も安全なはずだ。
そこでなんだが…。」
縄を外して欲しいとボスは言った。
おい待て、脱出に力を貸すなんて言ってないぞ誇張するなよ、と言いかけた矢先
「俺様が外すケロよ!おおっと間違えて縄をきつくしてしまったようだケロなぁ。ゲコォ!」
予想通りの小者っぷりを発揮したヒキニートに忍者の拳がクリーンヒットしていた。
お前は安定してるな、良くも悪くも。
「見苦しいものを見せてすまない。」
ボスはその恰好で言うなよという表情をしながらも、
「お宅も大変ですね。」
と大人のコメントを返していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます