のみすぎとゴリゴリのハイファンタジー

「お前らには世話になったな。これは元々この洞窟の奥にあったものだ。賢者の杖と書いてあったぞ。きっとお前らのこれからの旅に役立つだろう。」

ボスが渡してきたのは、一本の古びた杖だった。

「初めて手に入れるものには、慎重に一度鑑定をかけた方がいいで…」

「お宝だケロな!これは賢者の俺様が持つに相応しい一品だケロ!」

健さんから奪い取るように杖を持ったヒキニートの様子がなんだかおかしい。

みるみるうちに表情が何かをやり遂げたような穏やかなものになっていく。

「ふぅ…。世界平和について真剣に考えるでケロ。」

持った人間を強制的に賢者タイムにさせる杖か…。

名前的には間違ってない分、コレジャナイ感が半端ない。

皆でしょんぼりしながら、洞窟を後にした。


私たちはその足で、村長にクエスト達成の報告をしに向かった。

役場で愛想よくしながら対応してくれる村長に顛末を話し、売買契約書の控えを突きつけると、みるみるうちに村長の表情が変わって行った。

「そ、それをどこで…!わしは知らん、何も知らんぞ!全て寄合の奴らが勝手にやったことだ!!」

驚くほどテンプレ通りの対応をしてくれた。

「秘密を知ったからには生かしてはおけん。かくなる上は…。」

村長は護身用の銃を懐から取り出し、私たちの方に向かって構えようとした。

が、次の瞬間、全裸忍者によりガッチリとホールドされて持っていた銃を落としてしまった。本当、恰好以外はまともなんだけどなぁ。たまにウザいけど。

忍者が銃を拾えと顎で指すので、私は村長が落とした銃を拾った。

それを見届けた健さんが、村長に話しかける。

「村長、そういえばそろそろ選挙の時期ですのう。」

「それが何か。」

「対立候補もいるようですし、スキャンダルはちょっとまずいのではないですかのう。」

「…くそ、何がウィンウィンの関係だ!折角高い金払ったのにこんなことになるなんて。あの業者めもう二度と利用はせん!」

苦虫を噛み潰したような表情で村長はゴブリンたちの身分証を返却してきた。

どう見てもパスポートよね、これ。

何はともあれ、無事にゴブ達の身分証を手に入れたので洞窟に戻ることにしよう。

「変な気を起こしたら俺のマグナムが火を噴くぞ。」

忍者が仁王立ちで町長に凄んだ。

水鉄砲じゃないのかケロ…とヒキニートがなぜか町長と一緒に震えていた。


身分証と引き換えにゴブリン達が盗んでいったアイテムが戻ってきた。

盗品の山の中になぜかゴリラがいた。

次々と元の持ち主のもとに返っていき、最後に現金などといった

誰のかがわからないものが残った。勿論ゴリラも残っていた。

そりゃあそうだよなぁ。

「われわれには必要のないものですから、みなさんでどうぞ。

あ、あとこの事は他言無用で。」

要らないと全力で断ったのだが、お礼をしないのは礼儀としてなっていない

と村長に力説され、半ば押し付けられる形で残りのアイテムを全て受け取った。

口止め料というやつだそうだ。

口止め料?

何に使うのゴリラ…。

そもそもアイテム扱い、なのか?

もしかして5人目の仲…間?

あ、でもなんか嬉しくてハイになってるよ、ゴリラ。


「これでゴリゴリのハイ(な)ファンタジーですな。」

健さんがひとり、納得したように言った。


どうすんのこれ!?

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