のみすぎと穴掘り

健さんのために穴を掘る。

手が汚れるのが嫌なので基本の土魔法を使ってみたが、園芸用スコップひと掘り程度の土しか掘れなかった。寧ろ手で掘った方が早かった。

このクエスト終わったら実家に帰って教科書探してこよう。私は強く心に誓った。

途中、他のゴブリンのグループに見つかってボスを呼ばれそうになったが、さっき魔法で作った手作りの酒(笑)を渡したら、嬉しそうにどこかに行ってしまった。

酒と煙草はいざという時に身を助けるのだ。


無心に穴を掘っていると、いつの間にか復活していたカエルが何をしているのだと声をかけてきた。手伝ってくれと頼んだところ

「俺様は穴を掘っているのを応援する係をしてやるでケロ。ほらほら頑張るでケロ人間。」とドヤ顔で煽ってきたので、殴ってさっき堀った穴に頭だけ埋めておいた。

きっと何事もなかったかのように、あとでひょっこり出てくるだろうからこのくらいしても問題はないだろう。あぁ、でも。貴様がトロくさいから俺様がこれを貸してやろうといって放り投げてきた微妙なサイズの剣先スコップは役に立ったかも。どこから持ってきたのかはわからないけれど、そこだけはお礼を言っておこう。

心の中で。


さっきカエルを埋めた穴のほかにもうひとつ、人ひとりくらいがすっぽり入るサイズの穴が完成した。20分ほどでできたのは貸してもらった剣先が異様に高性能だったからだ。自動で穴掘ってくれるとか、どんな魔法がかかってんだこれ。

だけど掘った分の土が次々と水に変わっていくのは勘弁してほしい。

見ていて面白かったけど。


目の前の穴の中にはなみなみと水が入っている。はっきり言って邪魔だ。


………。


…そうだ!お酒に変えておいてあげよう。

これでしもべちゃんもきっと喜ぶはず。

我ながらナイスアイデアだ。


「健さん、お待たせ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る