のみすぎと幻の原住民バゴーン
入口をまっすぐ行くと、三叉路に出た。
「北と西と東、どっちに行く?」
「東からは何か変な音が聞こえるぞ。」
そういえば微かにゴゴゴゴという音が聞こえてくる。
「東は避けた方が無難ですかの。」
私もそう思うよ健さん。
「俺様がちょっと様子を見てきてやるでケロ。」
ケータイを片手にヒキニートがソワソワしている。
絶対こいつ動画撮りに行く気満々だ。
「今回の配信はヒキニート隊長、ヘンピナ村奥地に幻の原住民バゴーンを追う!で行くケロ!帰ったら早速字幕の編集するでケロ!これで俺様もゲコゲコ動画のトップランカーだケロ!!」
「おい、危ないから行くなよ」
「絶対に行くなよ」
忍者と私が止めた時には既にクソカエルの姿はなかった。
「仕方ありませんのう」
通路のポールに座っていた健さんがよっこらせと立ち上がりヒキニートを追いかけて東側へと向かうので、私たちも仕方なくついていくことにした。
ふぅ…やれやれだぜ。
「ヘンピナ村奥地に住むという幻の原住民バゴーン。隊長の俺様はその情報を聞き冒険者どもに護衛をさせ、今回洞窟への潜入を試みたでケロ。地鳴りのような音が響くというこの部屋を俺様は幻の原住民の住処だと睨んだケロ。しかし護衛とはいえ、ここからは冒険者達を危険にさらすので仕方なく置いてきたでケロ。やはり俺様の勘は正しかったでケロ!!」
部屋の入口でケータイに向かってヒキニートがシリアスな顔をしながら何か話している。
「あぁ、いたいた。お前何やってるんだ。」
「ゲコォ!!」
「シッ、静かに。寝ているのが起きてしまいますぞ。」
「せっかくいいところだったケロに…。貴様ら邪魔だケロよ。」
「ZZZZZ…」
視線を前方に移すと、大きな緑色のおっさんが体に似合った大きないびきをかきながら気持ちよさそうに寝ていた。サイズはさしずめ小さいおっさんの1.5倍程度といったところだ。
「これって…。」
「ホブゴブリンだな。起こすと厄介だ。」
モザイク系忍者が言う。
「さて。」
「健さんなんか秘策でもあるの?」
「条件がそろっておるようですし、これなら喚べるかもしれません。
ヒキニート殿そろそろ戻ってきてくださりませんかの?」
「ところどころに開いたこの穴は、何のために開けた穴でケロか。
バゴーンの生態は謎に満ちている…でケロ。」
カエルは探検隊ごっこに夢中のようだ。
「仕方ないやつだ、俺が回収してこよう」
肉色の忍者がサッと隣から消えた。
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