第24話 服屋の店主ちぇけら



「ウゲェ…眠い〜…頭いてぇ〜…」


今朝まためぐみんに叩き起こされた俺は軽く朝飯を済ませ服屋へと向かっていた。

しかし昨日ゆいゆいさんの冷たい視線を少しでも忘れようと酒を馬鹿みたいに飲んだお陰かまだ頭痛がする…。


「全くだらしがないですね、昨日あんなにお酒を飲むからですよ。」


「まぁまぁしょうがないじゃないかめぐみん、カズマにも色々あるんだ」


「そうだな、こんなになるまで酒を飲んだのはお前のせいだがな…」


「むっそういえばそうですね、ダクネスが余計な事を言わなければカズマがゆいゆいさんに冷たくみられずに済んだのに」


「んんー!2人からの罵倒!堪らん!」


ダクネス朝から絶好調だな〜、俺達2人の冷たい発言にも喜んでるぞ。

そしてめぐみんは喜ぶダクネスを見て怖くなったのか俺の服の袖を握ってきた。


「めぐみん大丈夫だ、ダクネスはこんな奴だと屋敷にいる時教えたろ?」


「そ、それはそうなんですけどね…いざあそこまで言われて喜ぶ姿を見てると怖くて…」


どんだけビビられてんだダクネスのやつ。


「そういえばカズマ、今日は何故服屋に?」


「あぁ実はちょっとボロボロになっためぐみんの服を直しにな、というかお前まで付いてこなくて良かったのに」


そう何故か朝出かける時ダクネスも付いて行くと言いだした、ちなみに今日のダクネスは何時もの防具姿ではなく黒のスーツに黒のタイトスカートを履いて来ている。


「ん、今日ここの鍛冶屋で新しい防具を作って貰おうと思ってだな、なのでついでに一緒に行こうと思った訳だ」


「ほぅ?そのついでと言うのは私達の事を言ってるんですかダクネス?」


「ち、違うぞ!私の用事がついでという事でだな!しかし今日のめぐみんはやけに攻めてくれるな…!だがこれもまた…ハァハァ」


「そ、そうですか…わかりました」


おいめぐみん引くな顔に出てんぞ


「しっかしダクネスが付いてくるなら俺は大人しく留守番でもしてれば良かったかな」


「何故そうなるのですか、服屋に行こうと言ったのはカズマじゃないですか」


いやまぁ確かに言ったよ、言ったけども、まさか二日酔いになるとは思わなかったもん。


「それに留守番するにしたってどうせする事無いんでしょう?」


「それはそうだけど…なぁめぐみん何故俺の腕に抱きつくんだ?」


「気分です駄目ですか?」


「い、いや別に良いけど…」


気分で抱きつかれても困るんだが、しかも僅かだがめぐみんの胸が当たって…


「2人ともイチャつくのは良いが…わ、私がいる事を忘れないでくれ」


「はっ!す、すまんダクネス…というか別にイチャついてる訳じゃないぞ!」


やべぇ、めぐみんの胸に気を取られ過ぎてダクネスの事すっかり忘れてた。


「そうですよ、これはただのスキンシップみたいなもんです」


めぐみんはそう言って更に胸を押し付けてきた、マジ何考えてんのこの子!?


「め、めぐみんそのちょっと胸が…」


「ん?胸がどうかしましたか?」


あっやばい!めぐみんの小さな胸の感触が!


「めぐみん!もうその辺にしといた方が良いと思うぞ!このままだと興奮したカズマがお前を襲うかもしれない!」


「んーそうですね、ダクネスが妬いてそうですし離れてあげますよ」


めぐみんはそう言って俺の腕から離れた、…ふぅしかしまためぐみんの胸に触れられるとは思わなかったな…何だろうとても癖になりそうな気がする、今度また揉ませてもらえないかな…。


「カズマ何ニヤニヤしてるんですか、ちょっと気持ち悪いですよ。」


おっとどうやら顔に出てしまったようだ、にしても気持ち悪いとか酷くないか?少し傷付くんだけども。


「めぐみんのいう通りだ、そういうやらしい顔をする時は家に帰って私の薄着姿を見てる時だけにするが良い!!」


「ダクネスは少し黙りましょうか」


「また罵倒…!!」


なんかダクネス今とんでもない事言ったな、べべ別にそんなやらしい目で見てないし?たまたまそういう風に見えただけだし?。


それと今更だけど屋敷に居た時より2人の仲が良くなった気がするな、あのピリピリした空気は何処へやら…まぁこのままめぐみんの記憶が戻るまで保って欲しいものだ。




家から出て10分ほど経ったか、ようやく服屋の看板が見える所まで歩いて来た


「むっ何処からか視線が…まさか」


「どしためぐみん〜」


「いえその誰かに見られてるような気がして…」


誰かに?あぁ〜なるほどそういう事か。


「めぐみんその視線は何処からか分かるか?」


「えっあぁそこの草むらのとこからですよ、ダクネスちょっと行って様子見て来てくれます?」


「おしわかった!いってくる!」


「待て待てー!ダクネス興奮しながら行こうとすんな!」


「なんだカズマ!止めてくれるな!」


「うるせぇドM!」


「くっ!ドM…!!」


全く何でこいつはこんなにブレないんだ…


「カズマカズマ、こんな所で油売らずに早く服屋行きましょ」


「あのな…お前そこに隠れてる相手分かってんだろ」


「さぁ?そこまでは分かりませんよ」


絶対分かってんだろめぐみんのやつ、全くどうして此処まで嫌がるんだか…


「なぁカズマ隠れてる相手とは?」


「あぁそれはちょっと待っててくれよ…ゆんゆーん!そこにいるんだろー!?」


「はふぁ!何故ばれたの!?どどどうしよう!?」


うちの爆裂狂センサーに引っかかったんだぞゆんゆんよ


「そんなところに隠れて無いでこっちこいよー!」


「は、はい!今行きますね!」


呼ばれた事が嬉しいのか凄い笑顔でこっちにくるゆんゆん、何だろうあの笑顔を見てると少し心苦しいような…


「あっめぐみんにダクネスさんおはようございますー!」


「おはようゆんゆん」


「やはりいたのですかぼっちのゆんゆん」


「だからぼっちじゃ無いってば!」


やれやれまた始まったぞ…本当仲が良いんだか悪いんだか…あっそうだ


「ゆんゆんこれから服屋に行くんだけど一緒にくるか?」


「え!行きます!是非行かしてください!」


「ちょ!カズマ何勝手に誘ってるんですか!」


「別に良いだろ?誘うと何かマズい事でもあんのか?」


「べ、別にそう訳じゃ…ブツブツ」


なんかめぐみんがブツブツと言い始めてるがとりあえず服屋に向かうとしよう


「んじゃ行くとするか」


「はい!」


「あっちょっと待ってくださいよ〜!」




「ふぅ、やっと着いたか」


やっと服屋に着いた俺は一息付く、しっかし今更だが、本当どの店も一軒しかないんだなこの里は。

他の3人はそんな事は気にせず服屋のドアを開ける。



カランカラン


「おやいらっしゃい…ってめぐみんとゆんゆんじゃないか久しぶりだな!それにそこの2人はめぐみんの仲間さんだな!」


店に入るとこの店の店主であろう黒いローブを羽織り眼鏡をかけた、めぐみん達と同じ紅魔族であり名前はちぇけらという。

しかしこの人一回しか会ってない俺とダクネスの事を覚えてるとは。


「お久ぶりです!ちぇけらさん!」


「久しぶり!今日は何の用だい?またローブでも買いに来たのかい?」


「あっいえ今日はその…」


ゆんゆんはそう言い此方をちらっと見る、俺はふと背後を見ると少し怯えためぐみんがいた。


「おいおい何怯えてんだよ」


「い、いやそのちょっと顔が怖かったのでつい…」


怖かったってお前な…まぁ確かに険しそうな顔してるし眼鏡付けてるから余計そう見えるかもだけど…


「何かめぐみんの様子が変な気がするが気のせいか?」


(あぁそういえば里の人達はめぐみんの事知らないだっけ、あんまりこういう事は言いふらしたく無いし此処は誤魔化しておくか。)


「あぁ実はめぐみんはちょっと体調が悪いだけなので気にしなくて良いですよ、なぁめぐみん?」


「は、はい!そうです今朝からちょっと体の調子があまり良くなくてですね…」


「そうなのか?まぁそれなら良いんだが…」


あっさりと誤魔化せたな…まぁこれで良い。

さてさっさとやる事済ますとするか。


「あぁそれと今日来たのはですね…めぐみんその袋貸してくれ。」


「あっはい、すみませんカズマ。」


めぐみんから小さい紙袋を貰うそれを店主に渡す。


「ん?これは?」


「実はめぐみんの服がボロボロになってしまいまして…その直してもらうって事は出来ませんかね?」


「ふぅむ、どれどれ少し見てみないと分からんが…良いかね?」


「あっはい!どうぞ!」


俺はそう言うと店主は紙袋を台の上に置き中に入っていた服を手に取る。


「おっこれは里にある学校の制服じゃないか、どれどれ…こりゃ随分とまぁやっちまってるな。

それにこの焦げ跡から見るにだいぶ日が経ってるみたいだな。」


流石は服屋の店主を名乗ってるだけあって、軽くみただけでどれだけ経ってるか分かるのか。


「んー…ギリギリ直せる範囲ではあるが…多分直せてもサイズが合わずに着づらいんじゃないか?」


「えっそうなんですか?」


「あぁサイズ的に前のめぐみんなら着れたかもしれんが…このまま直すのも良いが着るために此処に来たんだろう?なら今のサイズに合うようにしないと。」


おぉそこまで言ってないのになんて察しの良い店主なんだ。


「それならどうぞ測ってください、めぐみんもそれで良いよな?」


「えっんんと…はい私は構いませんよ」


少し間があったもののめぐみんの了承を得られたという事で、早速店主であるちぇけらはメジャーを取り出しめぐみんの体を手早く測っていく。


「これでよしと、んじゃ2日経ったらまた来てくれそれまでに直しておくよ」


「すみません、ありがとうございます。」


「はっはっは!別に良いさこれも仕事のうちだしな!」


「それじゃ俺達はこれで…」


「あぁ!また来てくれよ!」




店主に見送られた俺達4人はめぐみんの服を直してもらえる事となり次はダクネスの用事である防具を新調するため、鍛冶屋へと向かっていた。


「ふぅ、採寸されてる時あのおじさんにセクハラされないかヒヤヒヤしましたよ」


「お前は何を突然言い出すんだ」


「突然も何も屋敷に居た時にカズマに色んな事をされましたからね〜なのでこんな事でもヒヤヒヤしちゃうのも当然なのです」


「おおおい!今それは関係無いだろ!」


なにさらっとやばい事言ってんだ、あれは全部不可抗力だし!?たまたま胸を揉んだりめぐみんの裸を見たのも全部不可抗力だ!。


「カズマさん最低ですね、死ねば良いのに」


「カズマいくらめぐみんに記憶が無いからってそういう事をするのは良く無いと私は思うのだが…」


「違うっつーの!!あれは全部不可抗力だ!」


「その不可抗力で私の大切なものまで…あぁこれは私の記憶が戻った暁にはカズマに責任をとってもらいましょうか…。」


「「うわぁ…」」


「よーしお前は少し黙ってようか!!」


これ以上この話をしてると色々とまずい!2人の目がクズを見るような目になってきてるし!よしここは話を変えて…


「そ、そういえば服直してもらえる事になって良かったな!」


「あっあぁそうだな、しかし袋から出てきた服があんなにボロボロだったとは…どうやったらあそこまで…」


「まぁそれはめぐみんが元に戻った時に聞くとしようぜ」


「えっ流石にそれは勘弁してほしいのですが」


「何でだよ別に良いだろ?」


「ん〜何と無くその事については思い出したく無いというか…」


ふむふむ、記憶がない状態でも思い出したくない事はあるのか。


「しかしわざわざ三人とも付いて来なくても良かったのに」


「良いんだよどうせ後はめぐみんの爆裂魔法撃ちに行くだけだし、ついでだよ。」


「そうですよダクネス、ついでですよ」


「わ、私もついでにと…」


「あなたは帰れば良いでしょうゆんゆん」


「酷いよめぐみん!!」


「あはは…まぁ本当にありがとう」


「良いってことよ、おっ鍛冶屋の看板見えてきたぞ」


話してる間に随分と歩いたみたいだ、しかしまぁどの看板もゲームで見た事がある奴と一緒だな。


「おぉ〜あそこが鍛冶屋ですか」


「そうだよ、あっ実は鍛冶屋のおじさんは色んな所から注文が来たりするんですが、たまに貴族の人からも来たりするんですよね。

その…もしかしてダクネスさんって鍛冶屋のおじさんの常連さんだったりします?」


「あぁ此処で何時も予備の防具を頼んだり、傷付いた防具を修理してもらっていたんだ、まぁ今は多少の傷くらいならカズマに直して貰ってるが。」


「へぇー!カズマさんそういうの直せたりするんですね!」


「そうか?まぁ暇な時くらいしかやらんけどな。あれ直すの結構面倒いし。」


正直ヘコみとか直すのはとても面倒い、下手に力入れ過ぎると元の形に戻らなくなるしな。


「そ、そうなのか?たまに直す所を見てるがサクサクやってるものだから簡単かと…」


「あのな…そりゃ何度も頼まれたらどんどん手際が良くなるに決まってんだろ。本当ならもっと感謝されるべきだと思うんだけどな。」


「カズマ何アクアみたいな事を言ってるんだ…けど本当に感謝してるぞ」


「防具を直すのも結構大変なんですね…ってめぐみん何で拗ねてるの?」


「別に拗ねてませんよ、というか頼まなくて良いんですか?店に着きましたけど」


「おっいつの間に、ではちょっと行ってくる」


「おう行ってこい」


ダクネスはそう言い鍛冶屋の店主に声をかける、さて注文が終わる間に俺達は何してようかな。


「カズマカズマ、分かってはいますがこの後は…」


「ん?あぁ、分かってるよダクネスが戻ってきたら4人で行こうぜ」


「えぇ〜…私的にはカズマと2人きりが良いのですが」


「それは無理だ、この辺りのモンスターが強いんだからしょうがないだろ。」


「むぅ〜」


「そんなに落ち込むなよ、あっゆんゆんちょっと良いか?」


「あっはい、どうされました?」


「この後爆裂魔法を撃ちに行くんだが、また一緒に来てくれないか?」


「良いですよ!是非行かせてください!」


「おう宜しく頼むぞ」


「別について来なくても良いですけどね」


「もう!まためぐみんってばそんな事言って!」


やれやれまた始まったか、もう収まるまで放っておくか



数分後



「すまない、色々と手間取ってしまった」


「おっダクネスお帰り、んじゃダクネスも戻ってきた事だし行くとするか」


「ん?あぁ爆裂魔法を撃ちにか!」


「そうだよ、昨日里の近くに良い爆裂スポットがあってな、またそこに行こうと思ってる、ダクネスも来るだろ?」


「あぁそれは勿論だ、というか2人を止めなくても良いのか?」


「ん?あぁそいえば忘れてたわ、おい2人ともその辺にしとかないと置いてくぞ!」


「むっ!ちょっと置いて行かれるのは困るのですが!ゆんゆんは良いですけど!」


「そうですよカズマさん!誘っといて置いて行くなんてダストさんと一緒ですよ!…ねぇめぐみん今さらっと酷い事言わなかった?」


「言ってません」


いやいやダストと一緒って、あいつ普段ゆんゆんと何してるんだ、帰ったら少し聞いてみるか…。


「冗談だよ冗談、んじゃ2人とも早く行くぞダクネスも宜しく頼むわ」


「任せておけ!もし爆裂魔法の騒音でモンスターがやって来ても私が盾になってみせよう!」


「さぁ早く私の爆裂魔法を見せて差し上げましょう!!」


「あはは…」


やれやれ変に興奮してるやつが2人いるが…まぁこれも何時も通りというやつか…俺はほんの少し不安を抱きながら俺達4人は里の外へ向かったのだった。

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