第5話
誰がわたしの面倒を見るのか?
史織は今日も考えていた。夕食の弁当を食べながら考えていた。
親でもないし、赤の他人でもない。自分自身で生きていかなきゃいけない。だから、親の離婚を機会にして習のところに転がり込む絶好のチャンス。
でもどうやってそれも実現するのか?
想像もつかない。
史織はスマホを取り上げ、SNSで連絡を取ってみる。同じマンションの別の階の男の子。多分、同い年。
大人びていて、理屈っぽいのが大嫌いだが、やたらに知識が多い。出会った時のことはよく覚えている。わたしが父のPCをマンション共同のゴミ捨て場に運んで捨てた時に、「リサイクルシールが貼っていないじゃないか」と注意された。「そのPCもらっていい?」
結局、PCは彼の家に運ばれた。マンションは共有のLANがあるため、インターネットへの接続は簡単だった。
今でもスマホは買ってもらえないらしい。SNSでは自分のことをエクシマと呼んでいる。どういう意味か尋ねてみたことがあるがなんとなくだそうだ。
スマホに書き込む。
アドバイスがほしいの。
彼は基本的にオンラインゲームをやっている。
スペックが足りないとか、OSのバージョンがどうのとか呟いている。
ゲームの最中は、反応が遅いが、何かを調べている時はすぐに反応がある。
自分は登校拒否しているから、いろいろ調べる必要があるんだそうだ。
ここで?
SNS上でという意味だ。
そう。
なに?
親が離婚するんだけど、わたしはどちらにもついて行きたくないの。どうしたらいい?
どこへ行きたい?
友だちの子の家に住みたい。
離婚は、どういう形態?
形態?
協議離婚? 裁判?
?
話し合いで決まったのか、裁判で決めるのか?
話し合い
どちらが親権を、つまり引き取る?
まだ決まっていない。
ということは、まだ離婚の話し合いは終わっていないね。
親権が決まらないと離婚できない。
そうなんだ
両親はなんと言っている?
どちらが引き取るとか。どうして引き取りたいのかだとか。
父は生活費をたくさん稼いでいるから親権になると言っていて
母は女の子なのだから親権は自分にあると言っている
つまり、ふたりとも引き取ると?
そう。
でも、一緒に住みたくない理由は?
わたしにとって必要でないから
なぜ?
共働きだから、毎日、ほとんど話さないし、お金だけもらって
生活しているだけだから
なるほど、両親はふたりとも仕事で忙しいんだ
ならば監護者というのを覚えておくといい
わたし、嘘つくのがうまいの。 ソーダ @soda_ice
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