第4話
史織は中学生になってから、母から夕食の準備を任されていた。共働き夫婦の場合、小学校くらいまでは、学校で19時くらいまで預かってくれる。そういう子が何人か暗くなっていく学校のとある教室に残り、迎えに来る家族が来ると一人減り二人減り。寂しいかといえば、そういうことでもない。保育園では家族から離れる恐怖心があり、幼稚園ではそういう子どもが多かったし、母が気遣って早目に遅くても18時には迎えに来た。でも、その頃には、家族とは私とは別な人たちであることを察していたし、時間の潰し方も慣れていた。
この頃に習と出会った。
小学校では、家族は他人になっていたけれど、父母は逆に学校の成績を気にするようになって、うとましくなった。
科学の授業で共生というクマノミとイソギンチャクとか例にされていて、自分がクマノミで親がイソギンチャクかなと思った。
中学生になると成績のことがさらにうるさくなり、一方で母の仕事が忙しくなったために、夕食の買い出しから料理まで家族分を用意するようになり、「今日は夕食はいらない」「付き合いで呑んで帰る」とLINEで連絡が来るようになると、もう準備する意味もなくなった。
家族が消滅したのは中学生3年の時。それを理解するのに苦労し、習と話した結果、というか一方的に話していたのか、習と同じ高校に進学する目標にして、心を乱さず、親のもっと成績をあげろの連呼を遮断し、今、高校一年。
親はもう必要なかった。
待っている間、保育園では他の子となんとなく遊んでいればよかったし、この頃は内気だった気がする。幼稚園では習とたくさんの話をしていた気がする。小学校では、雰囲気が退屈だった。あくびをよくしていたし、何回あくびをしたのかカウントしてみたことがある。1日で30回。昼間に10回。日が暮れてから20回。そんなものだ。平均値を習ったので、一週間(五日間)、習とつけてみたことがある。1日で32.4回。最大値48回。最小値18回。試験期間だったので、回数にムラがある。習と試験勉強をしながら、ノートの最後のページに正の字を書く。
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