第7話兄妹での初登校

 翌日の日曜日はあきらら同じクラスの男子と出かけていた。もちろん莉奈と同居していること、親同士が再婚したことは秘密だ。その日は莉奈も友人と出かけていたのだが、たまに送られてくるRINEレインで連絡はとっていた。RINEとは現代の高校生がほとんど使っているSNSで俺も愛用している。


〈ここのお店のパンケーキ、すっごくおいしいよ!〉


文章とともに写真も添付されていた。莉奈の言う通りとてもうまそうだった。

返信をしようと文章を打とうとした時だった。


「おやおや? 雨宮クンは誰とRINEしているのかな?もしや、彼女さんかな??」


こういう時に限ってカンが良すぎるのが晃だ。背後からそう言いつつ俺のスマホを覗き込もうとする。瞬時の判断でスマホを閉じる。危なかった。あいつに俺らの関係を知られるとロクなことがない。落ち着くまではできるだけ隠しておきたい。これは俺も莉奈も同じ考えだった。


「いやちょっと親父に連絡してただけだ」


「そうかー残念、ついに親友和也に春が来たと思ったのにな~」


「俺に春が来るのは相当先だと思うぞ。まずお前らとつるんでいる時点で高校はもう捨ててるしな」


「「「「なんだとー!」」」」


その日俺はこいつらにジュースをおごらされたのであった。ちなみに、莉奈にはしっかり返信したのでご安心を。


 月曜日、第一の関門だ。俺と莉奈は朝食をとり学校の準備をして家を出る。同じ通学路なのでもちろん一緒に登校することになる。


「行ってきます!」「行ってきます」


「行ってらっしゃーい!」


梨沙さんに元気に送られた俺たちは学校へ向かった。


「なあ、やっぱり別々に行った方がいいんじゃねえか?」


誰かに見つかったら間違いなく付き合っていると勘違いされるだろう。そんな不安があった。


「え? 私は全然大丈夫だよー。むしろ、一緒に行きたいくらい。和也くんは私と一緒に行きたくない?」


「いや、そんなことはないんだが誰かに見つかったらどうするんだ?変な勘違いとかされないか?」


「変な勘違い?」


まさか、莉奈は何も気にしていないのか?それはそれで悲しいんだがな。


「付き合っているとか思われたらどうするんだ?」


「つ、付き合う? 私と和也くんが付き合う……」


「男女が二人で歩いていたらそう思われるのも不思議ではないだろ?」


莉奈の顔がみるみるうちに赤く染まっていった。


「そ、そ、そんな、私と和也くんが付き合うなんてそそそそんな……」


「いったん落ち着け、俺とお前は付き合う付き合わない以前に兄妹だ。一緒にいてもおかしいわけないだろ?」


「う、うん。そうだよね。気にすることなんてないよね!」


やっといつもの莉奈。いつもの笑顔になった。やはり莉奈には笑顔が一番似合う。その笑顔がこんなに近くで見れる俺は本当に恵まれている。自分で『うんうん』と納得して頷いていると


「どうしたの? 急に頷いて」


「特に何にもない。ただ、莉奈と兄弟になれてよかったなってな」


「和也くん……。私も兄妹になれてよかったよ!」


そんなことをお互い再確認しながら俺たちは学校に向かっていた。


 あと少しで学校。ここまでは特にお互いの知り合いに出くわすことはなく、安全に登校できていた。これなら大丈夫そうだと安心したその瞬間だった。

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ


ものすごいスピードで何かがこちらに向かってきている


「なんだ?」


俺はこの異常な速さの音に思わず振り向いた。やはりこちらに何かが向かってきていた。いや、モノではない人だ。誰かがものすごい速さでこちらに走ってきている。


「どうしたの? ……って、何あの人! すごい速さでこっちに来てるよ!?」


莉奈は当然驚いていた。だが、俺はその光景を見てもそこまで驚かなかった。驚くのではなくむしろ、どうしてこんな時にが……と落胆していた。先に言っておくが晃ではないぞ。なんせあいつは…


「わっ! あの走ってる子、女の子だよ和也くん! あれ? どうしてそんな落ち込んでいるの?」


そう、あんなに速く走れる女子なんかこの学校にはあいつくらいしかいないだろう。


「かああああああずうううううやああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


その声を聴いた瞬間俺は確信した。最悪だ。どうしてよりにもよってお前なんだよ……。そう思っているうちにあっという間にその声の主は俺たちのもとに追いついた。


「和也! これは一体どういうこと! 説明して!」















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