第6話雨宮兄妹!?
親父と梨沙さんは俺と莉奈からの承諾を得て無事に婚姻届けを市役所に提出。その日から俺と莉奈は義理の兄妹になるのであった。親父に再婚をカミングアウトされたのが金曜の放課後だったため、土曜日は一日かけて梨沙さんと莉奈の引っ越し作業を行った。俺の家は親父との二人暮らしのくせに無駄に広かったため空いてる部屋もあった。だから、二人が引っ越してくるのにはちょうど良かったのだ。もちろん俺も親父も引っ越しを手伝ったが重い荷物はほとんど俺が運んでいた。
「これ、結構重いな。莉奈この段ボール何が入っているんだ?」
「高校一年の時の教科書全部だよ?」
莉奈の部屋がある二階までの階段でしれっと答えた。ちょっとは心配してくれてもいいだろ。そんなことを思いつつ視線を上げたときだった。
「……あっ」
思わず間抜けな声が出た。そりゃそんな声も出る。なんせ莉奈のスカートの中が見えてしまったからだ。
「ん? どうしたの? そんな声出して」
「え、いや、なんでもない」
「なんでもなくないよ? だってまた顔真っ赤だよ?」
そうだ、昨日もこんなことがあった。本人は気づいてないだろうがいろいろと無防備すぎないか?
「ほんとうになんでもない」
「うそだ~。目、そらしてるもん」
じーっと疑いの目でこちらを見てくる莉奈。これ以上黙っていても
「実はだな、その、あまり言いたくないんだが」
「言ってみて?怒らないから」
微笑みながら優しく問いかけてくる莉奈に俺はついに真実を言った。
「り、莉奈のパンツを見てしまった」
「そっか、まあこんな階段じゃ見えちゃっても仕方がないか。見ようとして見たんじゃないんだよね?」
「もちろんだ。見ようとして見るならもっとじっくりと……あ」
「和也くん、やっぱりエッチだ~」
「言い訳はございません」
「うむ、ならよろしい」
うっかり口を滑らせてしまったものの莉奈は笑顔で許してくれた。
一通り荷物が運び終わるころすでに太陽は沈みかけていて、昼間の青空は夕日で赤く染まっていた。
「やっと終わったか~、そろそろ腹も減ってきたな~」
リビングのソファにぐだぁともたれかかってやたらとでかい声で言う親父。要するに晩飯を作れと言っているのだろう。
「はいはい、お待ちよ~」
やる気のない返事をしながら冷蔵庫を開けると、そこのは俺の思ってもいなかった光景が広がっていた。
「な、なんでこんなに食材が充実しているんだ? 朝見たときはほとんど空っぽだったぞ。」
「私が買ってきたのよ~。今日、特売やってたからいろいろ買いすぎちゃったかしら~?」
リビングの方から梨沙さんの声が聞こえた。梨沙さんも今日一日動きっぱなしで疲れたのか元気のない声だった。
「いえ、そんなことないです。ありがとうございます!」
これだけの食材があればそれなりの料理ができる。本当に梨沙さんには感謝だな。
「よし、やるか!」
気合を入れて料理を始めようとすると
「わ、私に手伝えることってあるかな?」
何もできないのがもどかしいのか、莉奈はそわそわしていた。
「じゃあ、テーブル拭いて箸とかだしといてくれ」
「了解! シェフ!」
ビシッと敬礼すると莉奈は晩飯の準備を始めた。
俺は俺でさっさと腹を空かした3人のために急いで料理を作った。
「ほい、できたぞ」
「「「おぉ!」」」
腹を空かした3人はすぐにテーブルに座った。
「こ、これは何ですかシェフ」
梨沙さんがよだれを垂らしながら言う。よほどお腹を空かしていたのだろう。
「普通の肉野菜炒めですよ。ちょっとピリ辛にしてみました。さぁ、食べましょうか」
すると、一番腹を空かしているだろう親父が
「手を合わせて、いただきます」
「「「いただきます」」」
まさかこんな風に家族四人でご飯を食べる日が来るとはな……俺はこの状況に少し感動していた。
「そういえば、莉奈と和也くんは兄妹になるわけだけど、どっちが上?」
食事中になんとなく梨沙さんが聞いてきた。俺も梨沙もそんなこと考えていなかった。
「わ、私は和也くんにおにいちゃんになってほしいな」
「莉奈がいいならいいけど」
「そう、それなら和也くんがお義兄さんね」
「そうか~、和也に妹ができるのか~」
親父がなぜだか知らないがすごくしみじみとしていた。
「義理のだけどな」
そんなことを言っていると
「義理でもれっきとした妹だよ?」
上目づかいで少し心配した目でこっちを見てくる。かわいくないわけがないな。
「そうだな、莉奈」
「うん! おにいちゃん!」
莉奈にお兄ちゃんと呼ばれときがくるとは……すまんな同志たちよ。
そんな話をしつつ晩御飯は終わり、雨宮家には兄妹ができたのだった。
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