第2話出会いは突然に

 ある日の放課後、俺が帰りの荷支度をしていると

「雨宮ー、帰ろうぜー」

といつものようにあきらが声をかけてくる。こいつは中高と同じ学校で中学の時から仲が良かった男子の一人だ。好きなものは? と聞くとコンマ何秒かの瞬間的な速さで女性と答えるような、まあどんな高校にもいるごく普通の男子だ。    「おうー」

 と軽い返事をして教室を晃とともに教室を出る。男とは不思議なもんで、昇降口につくころには4人くらいのグループができている。みんな気を使うこともなく、気軽に一緒に帰っている。ここで、ある一人の男子が

「今日、廊下で佐藤さんとすれ違ったんだ。あの女神のような笑顔。まじ美人だよなー」

 まずい、こんなことを言うと晃が――

「はぁ!? お前正気か? 佐藤さんより秀麗しゅうれいさんの方が絶対美人だからな!」

 はい、始まった。晃はいろんな女の人を見てきたが秀麗さんが一番美人だと、なにがあっても秀麗さんなのだと異論を認めようとしない。何が理由で秀麗さんなのかは教えてくれないが……。何はともあれこの状況はかなりめんどくさい。もう、俺を抜きで晃含めた男子3人が佐藤さんだの秀麗さんだのの言い合いで俺の話は聞いてくれそうにない。こうなったら先に一人で帰るのが一番だ。俺は

「先帰るわー」

 と言い、足早にその場から立ち去った。


 俺は、父親一人に育てられてきた。母親が俺を生んで間もなく家を出ていったためだ。だから俺は、母親の名前も顔も覚えていない。父親も最近は仕事で帰るのが遅いため普段は家には俺一人しかいない。そのため当然家事全般をしなくてはならなくなり、洗濯・掃除も・料理その他諸々を自分で行っている。そんな寂しい家の玄関につき鍵を開けようとすると。なんと鍵が開いていたのだ。こんな時間に親父が帰っているとは考えられないため、俺は空き巣でもいるのかと恐る恐る家の中に入った。

「ただいま」

 と一応言ってみると中から「おかえりー!」の声が。この声は親父?

「親父、いるのか?」

「おーう、早かったなー」

 と言いながら玄関に親父が来た。

「早かったなー、じゃねーよ! 親父の方が早いじゃねーか! 早く帰るなら連絡しろよ!」

「悪い悪い、急な話だったからな」

「なんだ? 急な話って……。ん? なんでうちの玄関に女ものの靴が? それも二足も…。親父、この靴は?」

「いいから、とりあえず中入れよ。ちゃんと4で話さないとな!」

「は? 何で4人なんだようちには俺と親父しかいねーだろ」

 と言いつつリビングへの扉を開ける。そこにいたのは…

「さ、佐藤さん!? 」

「は、はい! …えーっと、誰? 」


 その一言で俺のHPがどれだけ削られたかはご想像にお任せするとしよう…




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