第5話 静寂の謎と鍛冶師の男
「なぁ...フィレム...」
教会の外に出ると同時に声を出す
「どうしました?」
「1つ気になった事があるんだが、聞いてもいいか?」
「私の答えられる範囲なら答えますよ!」
「どうしてこんな静かなんだ?クリエイドラクションも現世もいつも通り...いや、それ以上に静か過ぎないか?朝のニュースもTwitterも騒がしかったのに、どうして今はこんなに??」
「そうですね...まず1つの理由として、こちらの転生した側があまり活気ある場所ではなかった点があるかと思います」
「どういうことだ?」
「活気ある場所ではないというか...ヴァイへリスもこれから向かうヘカリテも本来ならクリエイドラクションの奥地にある建造物で亜人族や他の住人があまり近寄らないので転生してもこちら側の混乱は大きくならなくて済んだということです」
「じゃあ現世はどうして?」
「この考えはあくまで私の推測なんですがよろしいですか?」
改まって聞いてくるフィレム
「ああ、大丈夫だ」
「クリエイドラクションには古代から選ばれた『3人』にのみ継承され続けているアークメイジという職業が存在します。彼らは私たちの想像を絶する膨大な魔力をいとも簡単に使いこなし、その能力には諸説ありますが世界をひっくり返すことも可能とも言われています」
「それがどうしたんだ?」
「この大規模な転生に運よくアークメイジが1人でも巻き込まれていたら、この転生したクリエイドラクションを覆う結界を張ることは容易いということです」
そう言いながら空を指さすフィレム
その先を見つめると何かバリアのようなものが薄く張られていた
さっき教会の後ろのビル群を見たときにはあんなものなかったのに...
「そうか...このクリエイドラクションもリアルタイムで対応し続けているんだな」
「それと、もう1つ理由があると思います」
「ん?」
不意を突かれて変な返事をしてしまった
「この転生の際に発生するエネルギーに関してです」
「エネルギーだと?」
「はい、転生が起きた時微量ですが周囲にエネルギー波が発生します」
「悪い、わかりやすく解説頼む」
「ここからが本題です。この大規模転生となれば話は別で、本来の量を大幅に超えてこの大都市トウキョウに広がり、電気系統をほとんど殺してしまったかと思います」
「は!?」
慌てて携帯の電源を押すがびくともしない
「クリエイドラクションには電気を利用して動くものがないのでこちらはあまり関係ないんですけどね」
「早くいってくれよ....」
「ま、まぁ!ヘカリテに向かえばきっと何か待ってるはずです!」
極端に肩を落とした俺に同情したのか空元気を見せるフィレム
「そうだな...行くか!!」
「はい!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2度目のテレポーテーションだったがやはり驚きは隠せずにいた
どう考えても教会の前だったのに気付いたら....
ここは...
「暑い...」
「ですね...」
じんわりと汗ばむ暑さだ
「やっと来たか!!!!」
正面の入り口のドアを蹴破り出てきたのは頭にバンダナを巻き、右手に酒瓶を握った大柄の男
「は...?」
「待ってたぞ!お前が日宮響か!!」
「いや、待て待て、誰だアン...」
「いいから来い!!」
ポカーンとなっているフィレムを残し
鍛冶屋の中へと強引に連れていかれる
「ここはな!ヘカリテというこの世界でも超絶人気を誇る鍛冶屋なんだ!」
店の中には様々な種類の武器が並んでいる
奥からは金属を鍛錬する音が聞こえる
「待て、落ち着け、とりあえず名前を教えてくれ」
「あ、そういえば名乗ってなかったな、俺の名前は亜人族のラクネス!このヘカリテで雇われている鍛冶師たちの長だ!」
「な、なるほど...俺の名前を知っていたのはどうしてだ?」
「老師がお前の武器と防具を作れと通達をよこしてきたからな!」
「お前、老師が何者か知っているのか!?」
「ああ!知っているも何も老師と俺は過去、共に修行をした仲だ!」
「頼む!少しだけでいいから老師のことを教えてくれないか!」
「どうしてだ?」
「俺はその老師とやらのことを何も知らないのにここまで手紙一枚で行動させられてきたんだ!何の連絡もなしにただこの場所に向かえとしか言ってこない奴のことを少しでも知りたいんだ!」
「老師の事はこのクリエイドラクションに生きる住人以外の者にはあまり口外してはいけないんだ...すまないな...」
「ならどうしてこんなところにまで呼び出す!?」
「一つだけ、教えといてやる、老師は無駄なことは決してしない、俺が教えられる範囲はこれだけだ」
「そうか...」
「いいか!そんなことよりな!お前の武器と防具を作ってやる!最速でな!」
「俺の武器と防具だと...?」
「そんなお通夜みたいな顔すんな!」
とんでもないスピードの腹パンをかますラクネス
「グハァ!いってぇ!!」
「ハハハハハハハハハ!!!!」
「んで...どんなの作ってくれるんだよ...」
「お前を見たところ扱えそうな得物は...無難にソードか?」
「おお!あの夢物語かと思っていた伝説の剣エクスカリバーを扱うことができるのか!?」
「なんだその変な名前は、俺はそんなダサい名前にはしないが」
「はぁ!?」
「まぁ、その反応を見たところソードでよさそうだな!」
「防具はどうなるんだ?」
「気分だな」
「お前...それでも鍛冶師の長かよ...」
「それより大事なのはお前の心の奥深くにある属性を見なければならない」
「属性?」
「ああ、この世界には『火』『水』『風』『土』『雷』という属性が存在する」
「それがどうしたんだ?」
「しかしこの属性は人間もしくは亜人族にしかない、獣人族や妖精族などと違い目立った特徴がない、その弱点を自らの文明が生み出した武器に属性を込めることによって生きてきたんだ」
「ってことは、ソードに属性を込めることによって俺も何か技が使えたりするのか?」
「ああ、まぁ、使いこなすとなると使い手の才能とかも関わってくるが」
「じゃあ早く俺の属性を見てくれよ!」
「よし、こっちへ来い」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
連れてこられたのは店の裏手
ラクネスは濁った灰色の石を持っている
「なんだその石は」
「この石を使って属性を見る」
「どうやって?」
「いいか見ておけ!意識を飛ばすなよ!!」
ラクネスが大声を上げると同時に俺の胸へと石をぶつける
それと同時に全身から力が抜け、瞼を開けておくことも立っていることも危うくなる
全身を光が覆い、不思議と温かい気持ちになった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まずい...これ以上続けられたら本当に意識が...!
「もう終わるぞ!!ハァッ!!!!」
ラクネスが最後の一押しをすると
ふと現実に引き戻されたような気分になった
「お、終わったのか?」
「ああ、見てみろこれを」
ラクネスが差し出したのは群青色がとても透き通ったような色の青い石
「さっきの灰色の石か?これは」
「そうだ、お前の属性はどうやら水だったようだな」
「水か...悪くないな...」
「しかし、これは驚いた...ここまで透き通った青色は初めて見るな...俺も」
「それって褒めてるのか...?」
「早く作るぞ!!、お前の得物を!!こいつは俺も作るのが楽しみになってきた!!」
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