既視感。

「華ちゃーん」


 自分の名前を呼ばれ、私は振り返ります。


「あ。ショッピングモールに、2人も来てたんだ…」


 近づいて来たのは、亜子さんと佳子ちゃんでした。


 2人は、私と同級生の双子さんです。


 ─ 何故か、顔も背格好も、私と瓜二つの。


 姉の佳子ちゃんは大きく、妹の亜子さんは小さく手を振りました。


 双子コーデの2人に、私も手を振り返します。


 そのお揃いの服に、何故か感じる既視感。


 何気に 自分の服装を確認して、私は固まりました。


 振っていた手が中途半端に止まったので、佳子ちゃんが駆け寄ります。


「どうしたの? 華ちゃん」


「ふ、服が…」


 少し遅れて来た亜子さんは、私と佳子ちゃんの服装を見比べました。


「あ!?」


 笑顔の佳子ちゃんが、私と亜子さんそれぞれに、自分の腕を絡めます。


「3人、お揃いだね♡」


----------


「私達と同じ様な服、良く持ってたねぇ…」


 先を歩く亜子さんは、自分の肩越しに振り返りました。


 俯き気味の私の腕を、佳子ちゃんが引っ張ります。


「お揃いなの…恥ずかしがってる?」


「こう言うの、初めてなんで…」


「─ いつも学校で お揃いなのに!」


「え…?」


 ショッピングモール吹き抜けに面したベンチエリア。


 その入り口で、私は立ち止まりました。


「─ もしかして、制服の事言ってる?」


「3人、おんなじ服だよね♡」


 先に座っていた亜子さんの隣に、勢い良く腰を下ろす佳子ちゃん。


 手招きに応じた私は、2人が座るベンチに向かって歩き出します。


「学校の制服を<お揃い>とは言わないと思う。。。」


----------


「は・な・ちゃーん」


 名前を呼ぶ声に、私は反応しました。


「さ、多美さん?」


「ほら いたー」


 私達を指差さす背後には、佐美さんと奈美さんの姿。


 3人は、私と同級生の三つ子さんでした。


 ─ 何の偶然か、その姿形は 複写したかの様に私にそっくりです。


 長女の奈美さんが、次女の多美さんの耳たぶを引っ張ります。


「公共の場で、大きな声を出さないで下さい。」


 ベンチの前に移動した三女の佐美さんは、座っている2人に問い掛けました。


「どっちが あぁで、どっちが かぁ?」


 佳子ちゃんが、勢い良く手を上げます。


「かぁは私です。佐美姉さま!」


 ハグを始める佳子ちゃんと佐美さん。


 その様子を目で追っていた私は、ある事に気が付きます。


「え?!」


 私はベンチから立ち上がりました。


 双子さん、三つ子さん、自分の順で、コーデを確認します。


「ろ、6人の服…おんなじ!?」


 言葉に反応した5人は、お互いと自分の服装を見比べました。


「ほんとうだ!!」


 奈美さんと多美さんが、顔を見合わせます。


「こんな事って、あるんですねぇ」


「双子ちゃんや華ちゃんとは、何の示し合わせもしてないのに…」


 両腕を開いた佐美さんに、佳子ちゃんは抱き付きました。


「… これは運命よね!」


「凄いです♡」


 亜子さんが、何気に呟きます。


「この状況で、1人だけ違う服だったら…かなり恥ずかしいかも だね」


 同じ姿形の6人中で、5人は お揃いなのに1人だけ服装が別。


 そんな悪目立ちの状況に、私は身震いしました。


「今日のコーデ、皆と同じで、本当に良かったぁ。。。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

双子と三つ子 紀之介 @otnknsk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ