双子と三つ子ともうひとりのお話

立っていたのが。

「洋介さん♡」


 隣りを歩いていた友人を呼ぶ声が、学校の廊下に響いた。


 声の主を探すために、僕も洋介と同じ様に振り向く。


 後ろの立っていたのは、見覚えのある女子だった。


(洋介の彼女さんで、名前は、確か佐美…)


 僕の内心の呟きは、洋介に否定される。


「…ご機嫌ですね 奈美さん。何か良い事でも、あったんですか?」


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「今の女子…」


 2人だけになるや否や、僕は洋介に確認した。


「─ 洋介の、彼女さんじゃ、ないんだよね?」


 頷く洋介。


 僕は、1番の疑問を口にした。


「で…何で、佐美さんと 同じ姿形なの?」


「さぁーが三つ子の末っ子で、奈美さんが その長女だから、かな」


「か、彼女さん、三つ子なの?」


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「よーちゃん♡」


 呼ばれた声の方向に顔向ける僕と洋介。


 廊下を歩いて近づいて来たのは、つい先程別れた女子と 瓜二つの容姿の人物だった。


(今度こそ、佐美さん?)


 僕が口に出さなかった予想は、洋介に否定される。


「何ですか、多美さん?」


「今度の日曜日は…私と、デートしよ♡」


「…」


「姿形はおんなじだから、問題ないでしょ♡」


「─ 拗ねた さぁーは、面倒くさいですよ?」


「うん、ほんの冗談だから。佐美ちゃんには、内緒にしといて♡」


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「…今のが、三つ子の次女さん?」


 廊下を遠ざかる女子の姿を見送りながら、僕は尋ねた。


「そう」


 肯定する洋介。


 僕は、素直に感心してみせた。


「…良く、三つ子の見分けが付くもんだ」


「3人の見分けは…付かない」


「え? でもさっき、2人の区別 付けてたよね?」


「3人のうち、さぁーじゃない人は、奈美さんか多美さんだからね。」


 歩き始めた洋介にツラれて、僕も歩きだす。


「─ もしかして、佐美さんと それ以外で、見分けてるって事?」


「さぁーは、見ただけで、9割方判るんだけど…」


 洋介は、窓の外を見た。


「他の2人は、さぁーじゃないって事しか、判らないんだよねぇ」


「さ、佐美さん以外は、消去法で認識してるんだ…」


「所作を見て、奈美さんか多美さんか判断してる。」


「…」


「さぁーを見分けるだけで、いっぱいいっぱい だった頃に比べれば、格段の進歩だよ!」


窓から視線を戻した洋介が、感慨深げに呟く。


「観察と推理の積み重ね、だね。」


「それって、恋愛を語る時に 使う単語じゃな無いと思うんだけど。。。」

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