第50話

それは鬼哭の口に入り、後頭部から突き出てきた。


と同時に紫苑が二本のナイフで両のこめかみを刺した。


ナイフは先ほどよりも深く鬼哭の身体の中に入り込んだ。


「とどめだぜ」


魁斗は満身の力で戦鎚を振り下ろした。


戦鎚は鬼哭の眉間のあたりを深く貫いた。


鬼哭の動きが止まった。


そしてゆっくりと倒れると、そのまま動かなくなった。


「やったぜ」


「ああ」


「きゃーーっ、おにいさん。これもあなたのおかげよ」


紫苑が清武に抱きついた。


充分すぎる質量の乳房が、清武の胸に押し付けられた。


「たしかに、清武さんのおかげですよ。あなたのカメラのフラッシュがなければ、私たちはみな殺されていました」


「飛燕の言うとおりだ。礼を言うぜ。あんちゃん、ありがとう」


清武は照れた。


こんなにも照れくさいのは、清武のまだ短い生涯において、初めてのことだろう。


「ありゃっ」


気がつけば、四人の周りに住人たちが集まってきていた。


そしてその場に正座して、両手を合わせて拝み始めた。


「おいおい、こりゃいったいどういうことだぜ」


「うむ。おそらく村人にとって一番強い守り神を倒した私たちが、より強い守り神と認識されたということではないかと思うのだが」


「えっ。あたいたち守り神になっちゃうの?」


「俺はそんなものになるつもりはないぜ」


「こちらにそのつもりはなくても、あちらにはあるようだな」


最年長ではないかと思える老人が四人に近づいて来た。

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