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後ろの窓際に一人佇む女性。


長い黒髪を春風に遊ばせ、桜の花びらを纏うその姿は桜の精かと思わせる程に綺麗だった。


切れ長な目は瞳が大きい為か美しくも可愛くも見え、すっと通った鼻や小さめの口はバランスよく配置されている。


「お…おはよう」


昨日の自己紹介の時にいただろうか。


記憶を辿ろうとする宮原に小さく微笑みかけると、女性はゆっくりと宮原に近づいた。


「早いね」


「校内探検しようかと思って…」


近くで見れば見る程、その整った顔立ちに宮原の思考が正確に判断できなくなっていく。


「そう。名前なんだったっけ?」


忘れちゃった。


小さく舌を出して笑う女性に宮原は小さく自身の名前を教えた。


「そうだった。宮原君、これあげる。食べきれなくて」


そう言って女性が差し出したのはクリームパンだった。


「朝、早いし男の子だもん。お腹すくでしょ?」


無言で受け取り何回も頷く宮原の姿に満足したのか、女性は嬉しそうに笑った。

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