困った人2

 昔、会社で研修中の新しい子が分からない所があると言うから見てやってくれと頼まれる。


 研修だけれど、社内で運用するアプリケーションを試しに作らせているという。


 簡単な仕様があって、それに添って作成しているが難航しているというのでヒアリング。


 仕様があるが、これこれこういう理由があって実現できない、と言うがその理由がよく分からない。


 というか問題とどう繋がるのかが分からない。


 詳細を聞くが大よそ何を言っているのか分からない。


「どう言えば分かってもらえるのかなぁ~」


 と困っているようなので、一つ一つハッキリさせていって問題点を絞り込み。


 絞り込むと、


「その方法で実現できるからそれを選んだ。だがその方法ではできないので止まっている」


 になった。つまり最初に語っていた技術情報のようなものは雑学みたいに本件とは全く無関係だった。


 まだ意味は分からないので、前後の文脈の矛盾をハッキリさせようとすると、


 間に「ごにょごにょ」という聞き取れない単語が挟まった。


 え? 何? なんて言ったの?


 ハッキリ言わせるとまた元の文脈に戻る。


 できるんだよね? 「できます」


 どこでできなくなった? 「……できないんですよ」


 いや今飛んだから。


 肝心な部分が飛んだから。


 いやまた、飛んだ。その間。その前。そこを教えて。いやまた飛んだから。


 というやりとりを数回繰り返してようやっと意味の通る文になると、


「そのプログラムがないからできない」


 じゃ作ればいいでしょ。今それやってるんでしょ。今プログラム作ってるんだよね?


「今作っている所で」


 じゃ何が分からないの?


「いや、分からないわけではなく。調べる前にあなたが来た、みたいな」


 分からないと言うから呼ばれてきてるんだが。


 内容自体は本やネットで調べればいくらでもサンプルがあるようなレベルのもの。




 要するに、人事の人間を相手になんか難しい事をやっているようにアピールすれば自分が高く見られると思っていた。


 仕様を渡されて、それがすごく困難なように言えば「オレカッコイイ」と思っていた。


 いままではプログラムが出来るのが当人だけで、周りには素人しかいなかった。


 だから自分が出来ないと言ったらそれは出来ないものだったが、


 まさか本物が来るとは思ってもみなかった、という反応。


 まあ邪推かもしれませんが、そうでないのなら、


『できると言って引き受けた事が、スキルが足りなくて出来なかっただけの奴』


 になります。


 どちらになるのかは当人が決める事。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る