つくりかた兼人録

困った人2 再び

　前回からしばらく経った後にまた同じ子からメールで質問。

　僕は当時派遣先で仕事をしている時期なので、合間を見て対応する事になる。

　作ったプログラムが正しく動かないが原因が分からないとな。

　ざっと見て、原因はすぐに分かった。

　凡ミスで、ベテランでもたまにやる。基本的な事だが切羽詰っていると自分では見つけられず、他の人に教えられる、なんて事も。

　「あ、ホンマや」と頭を掻いて苦笑いするようなありふれたミスです。

　その原因と、簡単な対処方法を伝える。

　手っ取り早く動かすならこう――、でも実用するには根本から直さないと(サンプルだから小さいデータだが、実用するには大きいデータが扱えないとダメ)ダメなのでこう直す。

　と指導。

　すると「なぜその修正でよいのかよく分からない」と返答。

　基本的な事を理解していない事が明確な質問内容なので、基礎ができていないのだなと基本的な事をまず勉強するようにとサイトを紹介。

「それは理解しています」

　いや理解していないからできていない。

　メールだからそれはハッキリと残っているので、ここが理解できていないからこういう質問が出る、と丁寧に解説。

　すると、

「解決しました」

　と引っ込んでいった。

　数日後、一応教えた側の責任もあるので、完成したのかどうかを確認。

　当然ながら何も解決していない。無駄もあれば不具合もある。

　結局大きいデータを扱えなくて大変な事になっている。

　基本を疎かにするからこうなる。そこを指摘すると、

「これは途中だからこうなっているだけで、そのうち作り直すつもりだった」

　それはいつ？　もう二週間くらいこの作業やってるんだよね？

　研修だから一日フルに使っていないとしても、新しく作っても一日くらいで出来る程度のプログラム。

　これはプロだからではなく、学校の授業でも一日で終了するくらいのカリキュラムだ。

　プログラムの１命令を正しく使えるがどうかというレベル。解説をちゃんと読んで理解できるかどうかのレベル。

　なぜ使う予定の無いものを時間かけて作っているのか。それをテストするのに何の意味があるのか？

　極めて正論な事をぶつけてみると、

「研修からちゃんとしたものを作らないといけないとは知りませんでした」

　これはいわゆる練習ではなく、社内で実用させる為のシステムとして始めているものだと聞いている。

　なぜそれがちゃんとしていなくて良いと思ったのか？　と送ると、

「あなたは初めから完璧な仕事ができたんでしょうか。もしそうなら是非その方法を教えて頂きたいです」

　と返ってきた。

　新卒ならまあだから先輩の言う事をよく聞いて精進する、と真っ当な事も言えるんですが、

　ソイツ２４才なんですよね。

　仕事をするのは初めてのようですが新卒ではないです。

　僕が２４才の頃と言えば、部署の統括をやっていました。

　メインプログラムはもっと前からやっており、誰に教えられるまでもなく責任を負う仕事をやってきています。

　別に僕が特別なわけではなく、先輩は２１才でメイン張ってプロジェクトを取り仕切ってました。

　皆教えてくれる人なんていません。

　申し訳ないが、僕にはなぜ君にそれができないのか分からない。

　勉強や練習は学校でやる事。

　どうすれば出来ないまま就職して仕事を始めようと考える事が出来るのか、その心理が理解できない。

　出来ない人は出来ない人で、まず学ぼうと言う姿勢から入るものです。

　別に時代が変わったわけでもなく、少し前に入ってきた新卒も僕は見ていますが、

　さらに若いがスキルもあり、応対もしっかりしている。唯一足りないのは経験だけ。

　ハッキリ言って少し経験を積めば軽く僕を飛び越していく人材でした。

　そんな者がいる中で、会社が君に給料を払う必要が感じられないが、君はどう思うのか？

　というような事を問うてみると、一応謝ってきたが、なんかコピペっぽい謝罪文。

　実際彼が数日かけて完了しない仕事も、僕が数時間で直しているわけで。

　過去にも似たような尻拭いをした経験もあるので、

　奴を使うのは勝手だが、その尻拭いをこっちに回してくるのはカンベンな。とマネージャーには報告。

　数年は仕事をしていたようですが、今はどうしているのやら。