頭のおかしい人4 自分が作らないから

 モンハンみたいな3Dのアクションゲームで、新しく魔法を作る時の話。


 地面から手が伸びて敵を合掌のように叩き潰し、ペラペラにしてしまう。


 という魔法の案がありました。


 パートの監督は別で、魔法実装のチームリーダーも別。


 彼らで仕様を煮詰めて、実作業自体は僕に降りてきました。


 こういう風に決まったから作業をよろしく、という事です。


 よろしくと言われても、これは実際の所どう作ったらいいのか……。


 以下、字下げしてある所は詳細なので、めんどくさい方は読み飛ばしてください。


  問題1

  プレイヤーの目の前に手が現れて敵を叩き潰すが(明後日の方向に出てもかっこ悪いので)、その時敵が真正面にいるとは限らない。

  なので一度正面にブラックホールのようなものを出し、敵を目の前まで吸いつけて移動させる。

  →吸引させるとしても、正面に障害物があったらそこで止まってしまう。進行不可能。

   一定時間後に失敗終了するとしてもその間無防備だし、その間に攻撃されたらどうなるのか?

   攻撃は、プレイヤーだけでなく、敵がその間に攻撃されて死ぬかもしれない。

   なによりテンポが悪い。


  問題2

  大きな手がベシャンと叩いて敵をペラペラにするが、真横とか真正面からしか潰せない、中途半端な角度で潰せない。

  なのでどんな角度から潰されてもいいように縦横全部潰す。ようするに潰した後は縦の棒みたいになる。

  →棒になったら見難いし、どうなったのか分かりにくい。なんで掌で叩き潰されて棒になるのか。


 など問題があるが、それはどうすればいいのか? と質問してもそこから悩み始める。


 まず打ち合わせには実装者を呼ぶべきです。


 呼ばないのなら、チームリーダーもプログラマーなのだから自分が実装するつもりで当たらなくてはダメです。


 自分達だけで適当に進めて、あとの問題は実装者が勝手に解決すればいい、と自分が作らない物だから楽に打ち合わせを進めたわけですね。


 問題を後から解決できるかもしれないが、それがユーザーにとって遊びいいものとは限らない。


 根本的に解決した方が面白くなるのならそれはそうするべきです。


 実際、契約時に意見アイデアがあればどんどん出してほしいと言われているのでその義務もあります。むしろ何もしないときちんと業務を果たしていない事にもなる。


 なのでディレクター、リーダーを一つ一つ回って問題点の解決案を出し、仕様を直す所から始める。


  問題1など、正面にいなくては困るのなら、魔法使うと同時にプレイヤーをそっちに向ければいい。


  問題2はベシャンと潰れた後に敵を真正面に向ければいい。そうすれば横からしか潰れないし、一瞬敵は見えなくなるので違和感もない。


 問題など初めから発生しない。


 ハッキリ言って「なんでこんな程度の事が思いつかないんだ?」くらいなので提案された方もバツが悪い。


 時間とった打ち合わせも無駄になるわけですからね。しかし否定する理由もないので通すしかない。現状のままでは問題があるわけですから。


 そして実装は進む。


 そしたらその魔法は没。


 まだ途中で完成もしていない。できがどうとかでなく「やっぱり止めた」が理由。それはもっと上の決定。末端で上記のような事があったのは上は知らぬ事。


 結局後に残ったのは僕がリーダー陣のプライドを潰したという事実だけ。


 こういうのは改善されたものをユーザーが遊んで喜んでくれて初めて報われるものなんですね。


『より良くするために働きかける』という行為を仇で返すというのは、最悪な現場だと言って差しさわりないと思うのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る