第八羽 最終戦

十月三十一日。冬が近づいてきていることもあり、肌寒い朝だ。布団から出るのはもう少し後にしよう。

「あいたた」

髪が引っ張られるような痛み。私はまどろみの中、手を頭の先に伸ばしそこにいるラビーを捕まえる。ラビーは私が寝ているときにご飯を催促する際には、髪を噛んでくるのだ。うさぎは、私たち人間以上に食事の時間をきちんと守りたいと思うものである。だが、休日ならまだしも普段の平日にこういった形で催促されることはない。それはつまり、

「やばい、寝過ごした!」

私は急いでラビーに食事をあげ、水が充分にあることを確認し、ペレットをバリボリしているラビーを横目に、颯爽と家を出た。口には食パンをくわえている。


なんとも慌しい朝。そんな今日は、私のアニマルカンパニー社での仮入社生活最終日。昨日まで感じていた不安や緊張は、何故か今はない。おそらくラビーが私の髪と共に食べてくれたのだろう。

「おはようございます!」

私は出社時間ぎりぎりにうさぎ課に到着した。動物駅から走ってきたから息が切れる。そんな姿を見て笑っている東十条さんと愛撫クイーンと増田さん。


この日常を明日以降も続けたい。


「そう思うなら、今日勝たないといけないな」

席についたところで東十条さんが声をかけてくれる。

「東十条さん、首尾はどうでしょうか」

私がそう言うと、東十条さんはにっこり笑いながら頷く。

「あとは、どうまとめて発表するかだね。野うさぎさんは今日は通常業務しなくていいわよ。そのために増田さんにもヘルプに来てもらっているし」

愛撫クイーンがそう言うと、奥の席に座っている増田さんがヤッホーと言いながら手を振ってくる。

皆が私のために手助けしようとしてくれる。それはとても嬉しいこと。だけど、

「すいません、そう言っていただけるのはとても嬉しいです。でも、今日も普段通りうさぎ達の世話をさせてください。今日の結果がどうあれ後悔したくないので」

というのが私の本音だ。

「俺は、実際のところ仕事をさぼってネギ焼きを食べながら漫画を読みたいのが、本音だ」

「私は、実際のところなでしこでチョコパフェを食べながら絵本を読みたい、それが本音です」

「私は、実際のところ猛獣課に戻ってにんにく食べながらムチを振るいたい」

「「「というわけで!」」」

「今日は、」

「うさぎ達の世話、」

「一人で全部よろしく!」

皆はそう言ってうさぎ課から出て行った。一人残される私。

「みんな鬼か!」

私はそう叫びながらも、今日までに覚えた仕事を順番にこなしていく。


もしかしてこれは不安に押しつぶされて余計なことを考えないようにする配慮なのだろうか。いや、考えすぎか。

「なあ、ホトちゃんはどう思う?」

最後になるかも知れないので、私はうさぎ達一匹ずつにこっそりオヤツをあげながら、声をかけていった。



 ☆



そんなこんなで時間は過ぎ、気が付けばもううさぎ商品考案大会まであと三十分。帰ってくる東十条さん、愛撫クイーン、増田さん。

「野うさぎ君、準備はいいかな」

東十条さんの問いかけに、私は力強く頷く。

「じゃあ行こうか、決戦の舞台へ」


長い前置きを終え、舞台は最終戦へ。



 ☆



うさぎ商品考案大会、予選最終回。私、野花真の四回目の挑戦であり、最後の挑戦となる。対戦相手は、ロップじい。今日見る彼は、普段の大人しい老人ではなく、その怖いぐらいの眼は年齢すら若く見せるほど。私自身の身体が震えている。これは怯えか。否。武者震いだ。

私はロップじいに軽く会釈する。ロップじいはそんな私に、まぁがんばりなさいとだけ言って、審査員と何やら話をしている。私は辺りを見渡す。今回はギャラリーとしてうさぎ課に所属する人の殆どが見に来ている。そしてその関係で会場も大会議室となっているから広い。

「野うさぎ君、そろそろ始めようか」

審査員との話が終わったのか、ロップじいから声がかかる。


VSロップじい。


先行は、今回も私、野花真から。と、スクリーン横の端末へ移動しようとした時、それをロップじいに制される。

「私の話すことは、もう既に東十条さんから聞いているはずだ。だから私が最初にそれを改めて言おうではないか」

東十条さんはロップじいに事前にアイデアを私に伝えるように言われていた。だから確かに私は既に聞いている。

「だから野うさぎ君が今この場所にいるということは、少なくとも私のアイデアを超えるものを持ってきているということだろう。それなら私が後攻になる意味はない」

確かにそうだ。


私に代わり、ロップじいがスクリーンの前へ。そして話し始める。

「私、烏丸は、うさぎのために働く人間を育成する場として、うさぎ課を提案する」


私たちはペットとしてうさぎを飼っているのではなく、例えるならうさぎの執事のような存在である。主人のために働くべきものなのだ。そして、執事としての能力を高めるため、私たちは自ら競い合う。それが考案大会の始まり。私たちはただうさぎの世話をするだけではダメなのだ。それであればどんな人間でも出来る。自身の能力を高めたり様々なアイデアを考え出すことがなければ、うさぎ側からその存在を切られてしまう。甘えは捨てよ。主人のために最良の食事を時間がずれることなく提供する。これは当たり前のことだ。そしてそれは誰もが主人に提供出来るわけではない。最も信頼のある執事長がその役を担う。だから私が毎日朝にうさぎの世話をしているのだ。とは言っても、一人では限界がある。だから私がいないときは、皆が世話をしてアピールすることを許している。アピールする方法は他にも色々あるだろう。例えば、ペレットの味を自身が吟味して美味しいことや毒性がないかを確認する。その上でうさぎ達に出せば、それは信頼してもらえるだろう。例えば、うさぎの身体を癒すマッサージをすることが出来れば、安らぎの時間を共に出来ることだろう。それは信頼されている証だ。そして、さらには本当に安心出来る環境や接し方をしてもらえば、一緒にいても負担にならない存在として認識してもらうことが出来るだろう。そのためにあえて嫌われ者である茨の道へ行くのも信頼されるだろう。

これらを出来る人間、うさぎのために生きる人間を育てる場として、私はうさぎ課を提案する。そして、そのうさぎ課が役目を終えるまで私は見守ることを約束する。


「以上だ」

うさぎ課が在る理由、様々な大会が行われている理由。全てはうさぎのために。そんなロップじいの想いを述べた、プレゼンテーションだった。事前に聞かされていたとは言え、今の私にはここまでの覚悟を持って働くということがどういうことなのかまで想像することは出来ない。

ちなみにこれ、明らかに既にうさぎ課は出来ているわけだし、既存アイデアの使用ということでこっちの不戦勝にはならないのだろうか。

「なるかボケ」

東十条さんがそう一蹴しそうだが。


ロップじいがこちらに向かって歩いてくる。そして、

「次は野うさぎ君、貴方の番です。聞かせてもらいますよ」

そう言って、最前席に座る。


野花真よ。私よ。まずは深呼吸しようか。スーハースーハー。そして、思い出そう。短い間だったとは言え、ここうさぎ課で過ごした日々を。


私は舞台に立つ。そして、自信を持って言えるアイデアのプレゼンテーション。始める。

「私、野花真が提案するのは、うさぎの映像です」


うさぎをずっと映していくだけの映像。それは何も珍しいものではありません。うさぎが食事しているシーンを集めたものや、ゴロンやティモテをしている瞬間を集めた動画もあります。ですが、そういったものは殆ど商品化はされていません。北極やサバンナに住む動物の動画がDVDや映画になっているのに比べると非常に少ないのです。私たちは、日々の生活の中でちょっとした気分転換や安らぎを求めて、音楽を聞いたり映画を見たりします。そういった時間に、今以上にうさぎの動画が入り込んでいくことが出来れば、より一層うさぎに対して愛情を持つことが出来ると思います。そのためにも、うさぎ課独自のうさぎ映像集を販売すべきと提案します。

と、ここまでが私が最初に考えたことです。このアイデアに対して私自身で改めて考えたとき、北極やサバンナに住む動物とうさぎの違いは何かが引っかかりました。そして出した答えは、実際に飼えるかどうかということです。正直うさぎであれば、実際に自分自身で飼っているうさぎを見るほうが何倍も癒されるのです。だから、このアイデアでは不完全。お蔵入りとしました。ですがそのあと、ロップじいが今日何を話すか聞きました。それを聞いて、私はこのアイデアの方向性が間違っていないことに気がつきました。ただ、足りないものがあったのです。それは、うさぎの傍にいる人間の存在です。まずは、これを見てください。


私はそう言うと、正面のスクリーンに映像を流し始める。そこには、多くのうさぎと、それを世話する人物の姿が映されている。場所は、うさぎ課で飼っているうさぎがいる部屋。

「これは、まさか私かね」

ロップじいのその言葉に、私は頷く。

「その通りです。今朝の映像です」

スクリーン上には、うさぎたちの世話をするロップじいの姿が映されていた。特に編集も何もしていない、ただそのままの映像。三分ほど流したところで、私は再びプレゼンテーションに戻る。


これは昨日の夜のうちに部屋にカメラをこっそり設置し、今朝の映像を隠し撮りしたものです。その犯罪性はさておき、この動画を見てどう思いますでしょうか。ここに映されているのは確かなうさぎへの愛情。という大げさなことだけではなく、うさぎの敷物を取り替えようとしたときにうさぎが脱走してしまっている様子や、水を換えてあげたあとにゲージに設置する前に直接うさぎに飲むかどうか聞いてみている様子、掃除した瞬間トイレにうさぎが駆け込みさっそく汚してしまいモー!と独り言を言ってしまっている様子。一生懸命掃除している横で、寝そべっているうさぎ。そしてそれを見て怒るのではなく何故か笑ってしまう姿。それらが映っています。

この映像と、いわゆるうさぎだけが映っている映像。どちらが見たいと思いますか。面白いと思いますか。私なら、この世話をしている人も映っている方が好きです。楽しいと思います。そしてうさぎへの確かな愛情を感じ取れる。

確かに私たちは主人をうさぎとする執事かも知れません。ですがそこには主従関係だけではなく、確かな愛情がある。それは忘れてはいけないことだと考えます。


総じて私は、提案します。

うさぎ課でうさぎを世話している映像集の販売を!


「以上です」

少しの間。

そしてその後にロップじいの拍手。それを皮切りに皆の拍手が大会議室に響き渡った。


私は深々と礼をした。



 ☆



舞台にいる私の元に、ロップじいがやってくる。

「野うさぎ君のうさぎに対する愛情が感じられたよ。いや、うさぎを世話するということに対する愛情かな。どちらにせよ、君になら任せられる気がするよ」

ロップじいはそう言うと、審査員の方を見る。頷く審査員。それを確認したのち、今度はうさぎ課の皆の方へ向く。

「今日の判定は、うさぎ課の皆さんにしていただく」

いきなりのロップじいの発言に驚いた。それは私だけでなく、東十条さんや愛撫クイーンや増田さん、その他のうさぎ課の人々。それら全員が全く想定していなかったことで、驚きのざわめきが出来る。審査員はそのざわめきを制しながら言う。

「それでは、野うさぎ氏が勝利であると思う人は、着席したままでいてください。ロップじい氏が勝利であると思う人は、ご起立願います」


ついにこの時が来た。


私がアニマルカンパニーうさぎ課に来て、約一ヶ月。その間に色々な出会い、色々な出来事があった。この短期間でも私は色々成長出来たと思う。だから今後もここで働き続けたい。皆と共に。


ガタッ。誰かが立つ音がする。その音がした方を見る。それは、東十条さんだった。ガタッ。東十条さんに続くように、愛撫クイーンと増田さんも立ち上がる。その三人が起立したのを引き金に、うさぎ課の皆は全員立ち上がった。それはつまり、私の敗北を意味していた。

「起立多数により、ロップじいの勝利とする!」

審査員の結果だけを無情に伝える言葉に、私はこの現実をしばらく受け入れることが出来なかった。


どうして、あれだけ協力してくれた東十条さん、愛撫クイーン、増田さんがロップじい側についたのか。昨日までの日々は嘘だったのか。

そうココロで言いながらも、私は気づいている。そうじゃない、ただ単に私の力が不足していただけということに。皆はあくまで公正に判断したのだ。でも、そうわかっていても、例えここが皆が見ている舞台の上であったとしても、涙は止まらない。

「待て、この結果に異議を申し立てる!」

ロップじいの突然の言葉。何故勝利した側のロップじいが?

私は涙をハンカチで拭き取る。驚きを隠せないでいるロップじいは、何故かうさぎ課の皆を問い詰めている。

「君たちが勝利するチャンスではないか! 今日の結果の意味はわかっているだろう?! なぜなんだ! 開放されたくはないのか、この呪縛から!」

珍しく声を荒立てているロップじい。そして、今日の結果の意味という言葉。私のアニマルカンパニーへの入社以外に、何か意味があったのだろうか。少なくともそういう話を私は聞いていない。

最前列に立っている東十条さんは、後ろを向いて皆に座るように言う。そして、私にも座るように言ってくる。立っているのは、ロップじいと東十条さんだけ。二人は見つめあう。そして東十条さんはゆっくりと話し始める。

「ロップじい、野うさぎ君がいるけど、気にせず話すぞ」

ロップじいはいったん私の方を見てから東十条さんに向き直り、頷く。

「いいだろう。どちらにせよ彼は知るはずだったことだ」

二人は一体何を話そうとしているのか。

「野うさぎ君、今から話すことは、覚えていないであろう君には意味がわからないと思う。でも黙って聞いていて欲しい」

東十条さんのその言葉の意味はわからないが、真剣であることはわかるので、私は静かに頷いた。それを見て、東十条さんは話を続ける。

「俺たちは、うさぎの身でありながら、禁断の食物を食べてしまい、呪いを受けている。そう、人間の姿となり、数多のうさぎを世話しなければならないという呪いを」

「そうだ。君たちは罰を受ける必要があった。正直に言えばここまで厳しい判決でなくてもよかったが、あの当時の時勢から仕方なかったのだ」

「ええ、もちろんわかっております。ロップじいは正しい判決を下した。それには俺を含めて皆異論はありません」

「だが、実際は私は悔いていた。皆をこうして働かせることに。だから私自身で積極的に私たちのことを真剣に考え、面倒を見てくれる人間を探していたのだ。だが、それは容易ではなかった」

「そうですね。人間というのはどうしても自身の存在が一番だ。うさぎを可愛いと思ってくれることはあっても、本当の意味で大切にしてくれるわけではない」

「だが、それは単に巡り合わせがよくないだけだと思って、私は諦めなかった。そして、あの店を作り出し、それを見つけることが出来る人間を探した。そこに現われたのが彼だ」

「そうですね、野うさぎ君は最初は仕事から逃げ出す口実としてうさぎを飼っているだけの人間だと思っていましたが、実際はそうじゃなかった」

「君たちの報告を日々受けるたびに、彼が私たちの探している人間なのだと感じたよ。そしてそれは今日のプレゼンテーションを聞いて、確信に変わった」

「それは俺も同じです」

「だったら何故?! 何故、私を勝利させたのだ!」

東十条さんは、少し恥ずかしそうに笑う。

「長いこと人間として生活しているうちに、皆、人間としての生活も悪くないかなと思い始めているのです。最初は罪の意識からしていた皆に対する世話も、今となっては野うさぎ君の言うとおり、確かな愛情を持って行っているのです」

東十条さんは、こちらを見る。

「だから、悪いな。今日の勝負、おそらく皆は野うさぎ君の勝利だと思っている。でも、君を勝たせるわけには行かないのだよ。例えそれが今まで一緒にがんばってきた仲間であってもな」

ロップじいの言葉からさっきまでの迫力が消えている。

「君たちはそこまで考えていたのか。なら私は一つだけ宣言しなければならない」

ロップじいは、うさぎ課の皆を見渡す。

「君たちは確かに罪うさぎである。だが、それと同時に私の誇れる、アニマルカンパニーの社員であるということを」

ロップじいのその言葉に、うさぎ課の皆は、それぞれ、これからもよろしくな、一緒にがんばろう、などの言葉をロップじいに投げかけている。



あーあ、私は本当に空気が読めない存在だな。



「あのーちょっといいですか」

既に忘れられていそうな私の声を聞き、皆はこちらを見る。その視線を受け、私は立ち上がる。そして、話し始める。


本当に今考えていることを話していいのか? 自問自答する。私の心は私に答える。迷うことはない、と。

「うさぎのことを真剣に考えて、面倒を見るという人間。それなら確かにここにいます」

私の言葉に、東十条さんは驚く。

「何を言い出すんだ、その言葉の意味がわかっているのか?!」

私は力強く頷く。

「今になってようやく思い出しました。皆さん、あの日見た夢、いやあれは実際夢じゃなかったのかな。そのときのうさぎ裁判にいたうさぎ達なんですね」

「君、覚えていたのか」

ロップじいも驚いている。

「ロップじい、約束する。私が皆の分もうさぎの執事となり、うさぎのために生きる。だから、彼らの、彼女らの罪を許し、その呪いを解いてほしい」

その私の言葉に、東十条さんは舞台の上まで駆け上がり、私の襟元を掴む。

「いい加減にしろ! そんなことをするともう会えなくなるんだぞ?! 俺たちは恋人になったのじゃないのか!」

私はその東十条さんの激しい言葉を受け、そのまま東十条さんを抱きしめる。そして、

「東十条さん、私も大人です。本当の大人というのはね、もっとドライなもの。ですよね」

私は東十条さんを強く抱きしめたままうさぎ課の皆を、愛撫クイーンを、増田さんを、そして最後にロップじいを見る。

「皆さん、色々お世話になりました。そして、さようなら、かな」

腕の中で暴れる東十条さん。

「ロップじい、待て! まだダメだ! まだ野うさぎ君では力不足だ! あと一年、いや半年だけでも鍛える時間を、猶予を! 皆何しているんだ、早くロップじいを止めないと!」

東十条さんのその叫びに、愛撫クイーンは答える。

「東十条先輩、もういいじゃないですか。私たちの務めは終わったのですよ」

続いて、増田さんも口を開く。

「元のうさぎに戻って生きましょう。それが、うさぎとして生まれた私たちの本当にすべきことだよ」

うさぎ課の皆も。

「久しぶりにうさぎに戻りますか」

「もう少し人間でいたかったけど、うさぎとしての生活も恋しくなってきたしな」


彼ら、彼女らの言葉を聞いたロップじいは、手に持っている杖を頭上に掲げる。その杖から優しい光が放たれ、それが私たちを包み始める。


うさぎがうさぎの面倒を見る。そんな状況まで追い込んでしまったのは人間の責任。私はうさぎのことを考え、うさぎのために生きる。それはつまり、私の愛した東十条さんを、その兄弟姉妹や家族を愛していくということ。

「東十条さん、それでいいよね」

優しい光の中、そう思ったそのとき、私の意識は遠のいていった。


薄れいく意識の中、微かに東十条さんの言葉が聞こえた気がする。

「だからお前は嫌いなんだよ!」

という言葉を。



でも、私は好きでしたよ。

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