第20話 プレゼント

「ただいま」

で、いいんだよね?


一週間ぶりに藤春家に帰ってきたので

ちょっと違和感というか気持ちが落ち着かない感じになっている。

そんな私に、居間の方から

「お帰り」

というタロウ様の声が聞こえた。


修行はまだ終わっていないけれど

一週間経ったら一旦藤春家に戻って一つ依頼をこなしてから

また修行に戻る事になっている。

私にとっては精神的休息日だ。


居間の扉を開けると、タロウ様はいつものごとくエレナさんのテレビショッピングを観ていた。

「まだ深夜じゃないですよ?」

エレナさんのテレビショッピングは大抵、深夜に放送されている。

けれど今はまだ夕方四時なのだ。

「これ録画だよ。最近、修行で疲れて深夜まで起きてられなかったから録っといたんだ」

テレビショッピングを録画してまで観るって、どんだけ好きなの?

テレビに映るエレナさんは、いつも通りのぱゆんぱゆんのお胸だった。

そしてこれまた、いつも通りのオフショルダーの服。

エレナさん言ってたっけ、オフショルダーの服が家系の服なんだって。


家系か、私の……土岐高丸の家は大昔は忍者の家柄だったと聞いた事がある。

それが忍術から魔法を使う家に変わっていったということだった。

そういえば、フラキさんが修行の時に着ている服って忍者の服に似てるかも。


「そうだ、サチ返ってきたら渡そうと思っていた物があるんだ」


と言ってタロウ様は洋服らしき物を私に差し出した。

その服は袋には入っていないので市販のものでは無いのだろうか。


「この服は?」


「姉様が作ってくれたんだ。エレナちゃんのテレビショッピングで売っていた特殊帷子を加工してね」


「特殊帷子?」

「うん、ほら、ダニエルさんが持ってた特殊グローブってあっただろ?あのシリーズの帷子版なんだ」

受け取った服を広げて見るとそれは忍者服のようだった。フラキさんがきているものよりも

もっとザ忍者服という感じだ。


「ありがとうございます」


ハナコ様の手作りなんだ。嬉しい。形はザ忍者服だけど女の子向けに

所々に可愛い刺繍がしてあったり胸元にリボンまで付いている。


「修行、辛い?」

「え?」

「この前、電話で話した時サチ、とてもキツそうだったから。何か修行に関連する事で元気付けたいと思って姉様と相談して作ってもらったんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る