第19話 女同士

フラキさんとの修行は、ほとんど毎日変わらず自習ばかり。

精神的に参っていた私は夕方からエレナさんとお茶する約束をして出かけた。


あのルイスの山での事以来、私とエレナさんはどんどん仲良くなって

今ではメールしたりお茶したりするようになっていた。

タロウ様は羨ましがるけれど、私とエレナさんは女同士の友達として

何だかフィーリングがあったのだ。


「エレナさんはいつもオフショルダーの服を着ているじゃない?もちろん似合ってるんだけど好きなんだなって、そしてそんなに自分の趣味を通せるって凄いなって思うの」


今日着ている服も襟フリルタイプのオフショルダーだ。

「ああこれね私の趣味でもあるけれどそれよりも前に、我が家の家系服なの」

「家系服?」

「私の母方の家はね、代々女性はオフショルダーの服を着る事になってるの」

「夏はいいけど、冬は寒くないの?この前のクリスマス衣装とかも」

「それがね、不思議な事に然程寒くないのよ。首から胸にかけての辺りが……やっぱり家系なのかしら、冷えないの」

へぇ、そういうもんなんだ。


「はーい!こちらをご覧ください」

あ、エレナさんが何処からともなく靴下のようなものを取り出した。

ここで前のようにテレビショッピングの商品紹介を始めるみたい。


「これはトクダン靴下です。トクダンとは特別にダン、暖かいという事です。この靴下を履くと足元だけでなく全身が暖かくなります。寒い地域で動きやすくするために薄着で戦わなきゃいけない、なーんて時に役立ちます」

「全身ですか?」

「そう。普通の靴下は足元だけですよね。この靴下は全身を暖めてくれます」

そう言うとエレナさんはその靴下を私の方に差し出した。

「これサンプルなんですけど使ってみてください。身体が冷えていると気持ちまで暗くなります。身体が暖まれば、気持ちも明るくなります、ね?」


私がフラキさんとの修行で暗くなっていたのを見抜いたのだろう、エレナさんは私に優しく微笑みかけてくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る