第15話 自信をなくす


「お前は自分が家督を継ぐはずじゃなかったと思って、どこか自分に言い訳して甘えているのだろう」

一通り、魔法を唱え終わったフラキさんは少しため息をつきながら言った。


私もタロウ様も本当は家督を継ぐはずじゃなかった。

元々はタロウ様の姉のハナコ様と私の姉のエリがそれぞれに家督を継ぐはずだった。

けれどタロウ様の成長を見たハナコ様が、そして同じく私の姉が私に家督を譲ったのだ。

タロウ様はまだしも、私は姉より優れているとは思えない。なのに何故姉が私に家督を譲ろうと思ったのか未だに私は納得というか分かっていない。


だからと言って家督を継ぐのが嫌だとか、自分じゃ無いと思っていたところ急に人生が変わった事に甘えて逃げてる気持ちなんて無い。

新たな魔法を覚えて、タロウ様と依頼をこなして、藤春家でタロウ様や旦那様、奥様と暮らす日々。今の私にはそれが自然に染み付いて嫌とか良いとか、もうそういう事をワザワザ考えることなくなってる。


「お前は自分が家督を継ぐはずじゃなかったのにと、どこかで不満に思い甘えた気持ちがあるんだろう」



不満にも思ってないし、甘えてなんていない!そう思っているのに言い返す事が出来なかった。

私自身が認識していない、他人からしか見えないダメなところがあるんじゃないかと、そういう不安はフラキさんの言葉で自信を無くしたからだ。


けれど見ただけで覚えろと言われても

それも一回だけでなんてやっぱり無理だ。


フラキさんはもちろん真剣に私の修行をつけてくださっている(と思う)

私を見ないで、ありきたりの叱咤を言っただけでは無いよね?


何だかさ、フラキさんのせいにしてしまったら

「甘えている」

と言われても仕方がないような罪悪感があるんだけど


だからと言って、私の何がダメなのか

どう、出来ていないから叱られているのかも分からないのだ。


叱られている理由が、見ただけで魔法を習得出来てないからだというのならば

それは無茶だと思ってしまうけど


それも無茶って言っちゃいけなんだろうか?とか

色々とぐるぐる考えてしまってわけが分からなくなってくる。


どうすればフラキさんが唱えた魔法を私は習得出来て

どういう態度を取ったら、一生懸命やろうとしているとなるんだろう。

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