第16話 甘えている?

「その甘えた態度を何とかしてから明日もう一度、修行に臨め!」


私がグルグルと悩んでいたら

怒ったようにしてフラキさんは道場から出て行ってしまった。


少し呆然としたものの、フラキさんがいなくなってホッとした。


やだな、こんな修行。

私、何を甘えているんだろう?

考えていたら涙が出てきそう。

泣いてしまう前に急いで部屋に帰ることににした。


母屋に入ると玄関にはフラキさんの靴は無かった。

何処かに行ったのだろうか?


まぁとにかく今はフラキさんはいないみたいだし、と思い慌てて部屋に入り

電話を手に取った。


今のこの状況の話を聞いてもらいたいし寂しさもあって、タロウ様に電話をしてみようと思ったのだ。



タロウ様にさっきのフラキさんの見て覚えろの話をしていたら

タロウ様もハナコ様から

「甘えている」

と指摘されたらしい。


タロウ様は自分がどう甘えているのか分かったのだろうか?

そう思い尋ねてみると……


「タロウ様は分かったんですか?」

「うん」

「凄い……どうやって分かったんですか?」

「うん、姉様が教えてくれた」

「……」

そうよね、タロウ様もこういう人だけど、ハナコ様もタロウ様に激甘だから。

「今サチは、姉様が甘いと思ってるだろう?」

「はい」

「けれど教えるという事に関しては甘い方が良いというのが我が藤春家の考えなんだ」

「それってどういう……」

「見て覚えろとか、やり方を盗めとか、それは藤春家では時間の無駄の上に間違って覚える危険もあると考えているんだ。そういう精神論みたいなのはいらない。教えるものが丁寧にしっかり教える。それが藤春家のやり方。教わる方もわからない事は聞く。自分で答えを探すのも大事だけど回り道する時間があるなら、他の自己向上に使った方が良いと、そう思わない?」

思わない?と言われたって……まぁ私もそれが良いのかなと思うけれど。

「土岐高丸家も藤春家とさほど変わらない考えだったはずだと思ってたけどなぁ」

「そうなんですか?土岐高丸家では教育者が不足していて私はずっと遠い分家の糸丸家の人たちに教わってるんです」

「教え方が下手なんだよ、そういう精神論的なやり方は。あれだよ、あれ、ブラック企業とかでさ入社時研修で自尊心をボロボロにさせるやつ、あれに似てるよそのフラキさんの指導」

「そうなんでしょうか……」

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