第9話 傘

「エレナちゃん、ダニエルさんどうしてここへ? しかもそれは雨出し傘では?」

「はい、煙が見えたのでこれが役に立つかもと持って登ってきました」


 雨出し傘っていうんだ。雨を出してるというよりホースで勢いよく水を出しているようだったけど。

「これ買おうよ。サチは水魔法使えないだろう? こういう時に便利じゃないか」


 まぁ便利は便利よね。けど、こんな時はそうそう無い気がするけれど。

「はぁい、皆さん! こちらは普通の傘ではありません。この傘から水を放出する事の出来る雨出し傘です」

「わお」

 いきなり目の前でエレナさんがテレビショッピングでやっているように商品のアピールを始めた。それにタロウ様が目をキラキラさせて興奮している。


「この傘は水魔法が使えなくても大丈夫。魔法の力を貯めておいて使う方法と、雨降りに傘として使って降ってきた雨を貯めて置く方法があります。しかも、雨や水を貯めても重くなりません。普段は普通の傘として使えるのもいいでしょ」


 そういってエレナさんはウィンクしてくる。

 私はちょっと遠慮気味に手をあげた。

「……買います」

「まいどありー」


 何だかまんまとエレナさんの商売にハマってしまったようで恥ずかしいけれど、何だかとても良い商品に思えてきた。

 タロウ様も、テレビを見ながらこうやってハマっているのだろうか。

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